「地味なドラマですが『バイス』の前に観ておきたい良作」記者たち 衝撃と畏怖の真実 よねさんの映画レビュー(感想・評価)
地味なドラマですが『バイス』の前に観ておきたい良作
9.11テロ後様々な情報が駆け巡るアメリカ国内。テロの背後にいるのはサダム・フセインではないかとの政府筋の憶測が流れてくる。原理主義者のビン・ラディンがイラクと手を組むわけがないと訝しむのは地方の新聞社を束ねるナイト・リッダー社の記者達。編集長ウォルコットの指揮下でランデーとストロベルは地道な取材に奔走するもイラクのテロ関与のエビデンスが見つからない。一方の米国政府はイラク糾弾の論調を強めていき大手メディアもそれに同調、報道は世論を誘導しイラク侵攻の気運が高まっていく中でナイト・リッダー社は傘下の新聞社にも愛想を尽かされ孤立していく。
昨年『ペンタゴン・ペーパーズ』の前に『ザ・シークレット・マン』があったように、今年は『バイス』の前にこれがある、たまたまなんでしょうがなかなか面白い公開順序。扱っているテーマもそうですが筋立てもよく似ていて、『バイス』ではチェイニーの半生と普通のオッサンの半生を並行して描写していましたが、こちらでランデーとストロベルの取材活動と若いバーテンダーの半生の平行描写。前者は爆笑オチまでの長い前フリでしたが後者は9.11テロ後に起こった別の悲劇を淡々と綴るドラマ、全く異なるものですがなかなか興味深いものがありました。正直『バイス』ほどのインパクトがない地味な作品ですが、監督でありウォルコットも演じているロブ・ライナーの主張が色濃く滲んでいて、信じることの恐ろしさ、エビデンスにブチ当たるまでとことん疑いあくまでも真実を追求することの大切さを丁寧に描写しています。
ウディ・ハレルソン、ジェームズ・マースデン、トミー・リー・ジョーンズと渋い男性陣、一瞬誰だか判らないくらいに普通の女性を演じていたミラ・ジョボヴィッチも素晴らしかったですが、多分10年ぶりくらいにスクリーンで観たジェシカ・ビールが美しかったです。ということで『バイス』を観る前にこちらも観ておくとかなり楽しめると思います。