「明日生きていればいい、噂以上の傑作で涙が止まらず」殺さない彼と死なない彼女 たいよーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
明日生きていればいい、噂以上の傑作で涙が止まらず
巷では聞いていたが、こんなに素晴らしい傑作だったとは。バルト9の柱に貼られていたあの頃に観なかったことを悔やむ。でも、映画館だったらこんなに泣けなかったかも。家で良かった。笑
どこから褒めようか考えたとき、やっぱりキャスティングだと思った。小坂を間宮祥太郎、鹿野を桜井日奈子が演じるが、不恰好なくらいが丁度よくてハマっている。殺すぞ、死ぬ、の会話にどこか愛らしさを覚えてしまって、それがまた可笑しくて仕方ない。桜井日奈子が『マイルノビッチ』のような陰キャをやるようになったのもこの作品からではないか。そうした新たな引き出しを開けたような雰囲気が堪らない。また、箭内夢菜とゆうたろう、恒松祐里と堀田真由のコンビも優しい雰囲気に心が暖まる。他にも金子大地や佐藤玲などのキャストも適宜合っていて心地よい。そんな雰囲気から造られるので、序盤からのめり込むように観てしまった。
さらに、この柔らかい雰囲気が作品を際立たせている。木漏れ日のような明るさに、陰陽のバランスの良さ。適宜引き出された美しい画はどこを切っても様になる。そこによく出来た脚本が落とし込まれているので、愛くるしい作風に仕上がっている。もっと早く観ておくべきだった。
釣り合わないような死生感を持って生きていく彼らだが、声高にしないだけで我々にも当てはまるような痛みだったりする。だからこそ、その世界に惹かれ、好きになってしまうのだろう。円盤を買おうか悩むくらいの傑作。こんなに泣いたなら、映画館で観なくて良かったかもしれない。笑
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