22年目の記憶のレビュー・感想・評価
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道化の涙の先に見えるもの
どうやらこの映画はソル・ギョングの演技を楽しむ映画らしい。それは別に構わないと思うが、肝心なのは彼の演技を通して何を感じるかである。 そして、その肝心な部分がぼやけてしまっている感は否めない。 金日成になりきってしまった父を見つめる息子の視点で物語は紡ぎだされるが、息子のテシクが父の姿に何を思うか?ということよりも父・ソングンがいかにして金日成になったか?の方に多くのシーンが割かれる。 さらに言うなら金日成になってしまった父とのエピソードはほとんど無く、父と息子の葛藤や解離は描かれない。 なんだかバランスの悪い構成なのだ。 父の愛に気づいた息子が、家族の素晴らしさに目覚めるというストーリーの中で、核になるはずの息子に全く焦点が当たらない。これで観ている側に感情の高鳴りを期待する方が無理というものだろう。 それよりはむしろ金日成となってしまったソングンを取り囲む一部として、脚本を担当した学生や演技指導を受け持った教授のような立ち位置として、父の狂気を見つめるキャラクターであった方が全体のバランスはとれていたように思う。 道化として過ごしてきたソングンにスポットを当てたかったのならば、そうすべきだった。 逆に息子・テシクの変化と成長を観せるつもりなら、父に翻弄された日々と葛藤を主軸にして、父がどのように金日成になったかという部分は抑えた方が深みがあったと思う。 演技に見応えがあっただけに、ちょっと残念な映画だった。
父と息子の関係は月へ行くより難しい。
大根役者の父と、夢想家の父を慕う息子。しかし夢ばかり見ていられない。生々しい現実を目の当たりにして息子は父を棄てる。儒教思想がそこはかとなく人々の心の底に棲むこの国で自己を肯定しつつ幸せになるにはよほどの覚悟が必要なのだろう。 役者としての今までの価値観を疑うこともなく役に成り切ることだけに情熱を注いでいては演技は成立しない。分かり切ったコトを理解できない。そのコトだけで、もう役者ではない。ムリをすると碌な結果は生まれない。 可哀想なのは父に囲われてしまった息子だ。 反面教師としての父を取り込み明るい未来へと歩き始めて行く予感。多分、そこしはありそうな気にさせてくれる。そんな映画。君はどうする。
【”私の父は、世界で最も哀しい悪役を一生を掛けて演じました・・。” ソル・ギョングの演技には毎回、脱帽である。】
ー 売れなく、且つセリフも上手く覚えられない舞台役者ソングン(ソル・ギョング)が、1972年、【南北共同声明】が、発表されたことにより、韓国中央情報部(KCIA)によるオーディションにより、金日成の代役となり、”この役は誰にも渡さない!”と誓ったソングンは、日の目を見ないまま年齢を重ねていった・・。- ◆南北共同声明 ・1972年7月4日 韓国と北朝鮮の統一に向けた共同声明。 一時的に、朝鮮半島は統一の雰囲気に包まれた。だが、それは政権の中枢にいた者は誰も信じてはいなかった・・。 ■今作の印象・・というか、ソル・ギョングの凄さ。 ・売れない舞台役者の拙い演技。 そして、まさかの金日成の代役に指名された後の、徐々に”本人として”演技を重ねるうちに、思想も含めて、本人のものになって行く過程。それには、”ジャージャー麵を只管に食し、太って行くソル・ギョングメソッドも含めて・・。 - 公開日が逆になるが、「殺人者の記憶法」のやせ細った強烈な印象があったので・・。- ■ソングンの息子を演じた、パク・ヘイルの演技も見事である。 <南北共同声明が雲散霧消した後も、只管に金日成を演じ続けたソングンの姿。 強烈な、体制批判の映画でもある。 韓国の、ポリティカルムービーの熱量を、”今作ではややコメディ要素も絡めて描いた作品。 けれど、ラストでの展開は、見事である。泣かせるのである。> <シネマテーク高崎にて鑑賞 出張先であったため、鑑賞記録なし。> <2021年2月4日 別媒体にて再鑑賞>
哀れな男の話かと思いきや
とても良く出来たお話だった。 金日成には似てないけど、 主人公の生き方が ソル・ギョングがとてもハマってるように思えた。 売れないけど、とても良いお父さんが 金日成のキャラクターを掴んで行き、 演技に没頭するあまり家族と歪みが出来て、 息子に辛く当たって反省もしない様に とても悲しくなった。 重いし哀れな男の話だけど、 コメディに仕上げられてて、 とても見やすかったし面白かった。 計画が頓挫して、どういう人生を送るんだろ? と思ってたら、息子も散々、親父は施設へ。 息子が何故チャランポランになったかも、 納得行ったし、 ラストも演劇に取り憑かれた男の執念が見れて、 とても良い演出だったと思う。 僕が息子だったら、もっと号泣してたと思うけど。 素晴らしい映画だった。
いや〜、最後は泣いたなぁ〜 息子への愛の深さが父を作ったんだね… ...
いや〜、最後は泣いたなぁ〜 息子への愛の深さが父を作ったんだね… 最後の最後までお父さんは息子にカッコイイとこ見せたかったんだよな そして最後にその愛がわかったから、息子も父親になる決心が出来た 素晴らしい映画でした
どこに転がるかわからない面白さ
1972年の南北共同宣言に伴い、韓国政府は金日成との会談リハーサル用に、役者に金日成の思考をトレスさせた、スパーリングパートナーを作り出そうとした。 男一人で息子を育てていた、売れない役者・ソングンは、そのオーディションとは知らず、金と役を目当てに試験を受けて合格する。 しかし、拷問を伴う過酷なトレーニングで心は壊れ、次第に自分が金日成その人だと思い込むようになり…… というところから始まる、親子再生の物語。 国家の狂気と、それに振り回された男の悲哀。 そして、国家と父親に人生をずたずたにされた息子。 息子を「正日」と呼ぶところは、怖く思えばいいのか、笑っていいところなのか、悩みました。 どこにどう転がるのか、全く予想がつかない快作にして怪作。 最後には、涙が… 実に面白かった。
22年目にして知る父の愛情
心温まる良い映画だったわー 1972年に韓国と北朝鮮の南北首脳会談に向けて、リハーサルが行われたという報道記事に着想を得て作られた作品 1972年、韓国が行ったオーディションで、金日成に選ばれた売れない俳優のお父さん(ソル・ギョング)は、その日から、南北首脳会談のリハーサルに向けて、役作りを始める やがてお父さんは、自分が金日成本人だと思いこむようになり、息子は、そんな困ったお父さんに振り回されるようになる しかし、それはお父さんが息子のために受けた仕事だった シングルファーザーのお父さんは、息子に尊敬される俳優になりたいと思っていた きっと、世のお父さんの多くが、そう思うように、息子が学校でクラスメイトに自慢できるような父親になりたいと必死だったのだ しかし、現実はそうもいかず、いつまでも、売れない役者のままだった そんなお父さんに千載一遇のチャンスがやってくる それが、大統領の前で、金日成のフリをするという仕事だったのだ その役を演じるために、金日成の喋り方、クセ、考え方をたたきこんで、金日成になりきっていく しかし、その結果、息子の心はお父さんから離れていく 小学生の息子は、父親の愛情を欲しがっていたのだ しかし、お父さんは、金日成を演じることに夢中になるあまり、息子の存在すらも忘れてのめり込んでしまっていたからだった それ以来、息子はそんな父親のことなど捨てたつもりでいたのだが、 22年後の1994年 息子(パク・ヘイル)は父と再会する 息子もまた、子供を持つ年になって、ようやく、その頃の父の気持ちを理解するようになる しかし、息子の気持ちもよくわかる なんとも、困ったお父さんなのだ 自分は、金日成だと思いこみ、政府からアカだと言われ、所構わず、共産主義の素晴らしさを説き始める そんなお父さんのことを理解しろと言われても、難しいだろう しかしこれは、 お父さんと息子だからこそ、 より切なくなる話だと思った 息子にカッコいいところを見せたいお父さんと、誰よりも強くてカッコいいお父さんでいて欲しい息子 それは、互いに愛し合っているからこそだけれど、二人とも、素直に愛情表現をすることができず、反発し合ってしまう そんな二人の心のうちが痛いほど分かるからこそ、観ているこちらは、すごくじれったいし、 だけど、微笑ましい そして、金日成になりきるお父さんを、ソル・ギョングが演じているから、とても真実味がある話になっていると思った ソル・ギョングこそ、おじいちゃんになって痴呆症になっても、演技をしていそうな俳優ナンバー1だからだ 優しいけど、ダメ男のお父さんが、少しずつ金日成へと変化していく過程の自然さは、まさに、ソル・ギョングだからこその演技だった 私も、親と暮らしていて、たまにキツイことを言ってしまうことがある それは、相手が家族だからこそ、甘えてしうからだけれど、この映画を観て、そんな自分を「猛省」した。 もっと優しくしてあげないといけないなぁと思った どんなお父さんでも、それがたとえ独裁者でも、子供にとっては、最高のお父さんなのだ
ちょっと予想外な展開で…
影武者的なサスペンスと思ってみたら親子愛作品だった。父さんが自分の役者への夢が捨て切れずこうなってしまったのか子供への尊厳のためにこうなったのかいまいち心情が理解できなかった。役に入り込みすぎたのか厳しい拷問指導でこうなったのかもいまいちわからず。なんか全体的にぼやっと見終わってしまいました。
参った
6本目。 後半、圧倒された。 劇場の空気も変わった感じがしたし。 もう終わりって所からの畳み掛けにやられた。 韓国映画の奥深さ、引き出しの具合に頭が下がる。 荻上チキがラジオで語りそうな作品。
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