「彼氏と暮せば」きみと、波にのれたら Don-chanさんの映画レビュー(感想・評価)
彼氏と暮せば
絵ならではの歪みや 簡略化された陰影、デフォルメ、違和感のあるシチュエーションにセンスの良さを感じました。
音楽担当の大島 ミチルさんは、湯浅 政明監督と同じ3月16日が誕生日。
主題歌は「Brand New Story」(GENERATIONS from EXILE TRIBE)。
♪きーみーが ながめていーる みなもはー あざやかに きらーめき
向水 ひな子(声:川栄 李奈)は、おっちょこちょいで ドジだけど 不思議と 水 に守られている(序盤、やけに 水が ひな子に何かを訴えてくる)、と解釈しました。
雛罌粟 港( GENERATIONS from EXILE TRIBEの片寄 涼太)は、声が素朴で特徴的で良かったです(声優として能力が低いということではなく、ただ ヘタウマ なだけ。『ちびまる子ちゃん』も『クレヨンしんちゃん』も、画力が低いところが魅力の ヘタウマ であったし、声のヘタウマと言えば 『風立ちぬ』の堀越二郎を務めた庵野秀明さんのおかげで、“素朴で純粋な男と 策略に満ちた世界の 対比”を楽しめます)。
ひな子は 火 に殺されそうになる場面があり、港は 水 に殺されそうになる場面がありました。港は 二度目で ひな子不在の為亡くなります。
ひな子は 水の中の港と暮らし始めるのは良いのですが、得意のサーフィンが できなくなってしまいます。『魔女の宅急便』のキキが魔法を使えなくなった時のように、誰かのせいでも 何かのせいでもなく、問題は自分の中にあるのでした。
ひな子が見たものは 多分 ほとんどが幻想 だったのかもしれません。洋子(声:松本 穂香)達がクライマックスで見たものは、水が ひな子のために 皆に見せたもの だろうと推測します。港の能力ではなく、ひな子の能力が関係しているのだと考えます。
港が 幽霊になったとか 成仏したという解釈もできますが、それは一般常識などの既成の概念によるミスリードなのかなと思います。
ひな子には 水 が味方する という「ミラクルなファンタジーの話」と捉えました。
前半、ラヴラヴっぷりを見せつけられます。少子化対策の一環の作品として、評価できるかもしれません。
中盤、一緒に暮らす前に あっけなく別れが訪れます。その喪失感の描写が、意外と あっさりしていて、序盤からチラチラ登場していた川村 山葵(声:伊藤健太郎)が、ひな子のパートナーである港の代わりを引き受けて ハッピーエンディングを迎えそうな勢いを感じました。
作品自体が なんだか おっちょこちょい な感じでハラハラしました。
何でもできる天才に見えた港が、実は努力家で、過去に ひな子が救助した男の子であったことまで知り、港への 執着や 依存から 奇跡のシチュエーションで乗り越えて、いろんな危機から 一氣に抜け出します。
ひな子が再び波に向かっていくところで物語は終わります。『魔女の宅急便』(ジブリ作品)のキキは、おそらくトンボと暮らすだろう と予想できる終わり方でしたが、今作の場合、パートナー不在で終わります。きっと ひな子が本氣で願えば、水 の中に 港 が現れるのかもしれませんが、おそらく もう、ひな子は 余程の事がない限り 港 を呼ばないでしょう。
軽くアカペラで唄ったくらいでは 港が現れないようですが、あの歌も封印されるかもしれません。
時を超え 遺伝子を受け継いだ孫 あたりが 再び 同じ現象を体験することが あるかもしれませんが...。想像を搔き立てられます。