「誰のための作品なのか」きみと、波にのれたら もりめろんさんの映画レビュー(感想・評価)
誰のための作品なのか
河瀬直美監督が、ちょっと前に岩田剛典をキャストにすえて『Vision』という映画を撮ったとき、「あれ、河瀬監督どうしたのかな」なんてことを思った。
河瀬さんといえば『殯の森』や『あん』などで知られ、カンヌのパルムドール受賞経験もある、有名かつ実力もある監督だ。そんな彼女がなぜ”がんちゃん”を…と訝しく思ったら、何でもLDHが制作費を出していたらしい。
おそらく、LDHにはそういった芸術方面のフォロワーを増やしたいとい狙いがあるのだと(勝手に)推測しているのだけれど、本作もきっとそうなのだろう。
実際、リアルサウンドにて脚本家・吉田玲音さんのインタビューが掲載されているが、今回のキャストはEXILEの方だけは最初に決まっていて、彼をベースに港を造形していったらしい。
じゃあ、なんで湯浅監督はLDHと手を組んだのか。お金のことはよくわからんけど、やっぱり間口を広げたかったんだろう。今回は若者に、アニメを観ない広い観客に向けて作られていることは明らかなのだから。
それは成功したのか?
興行収入をみてみないとわからんけど、期待はできないと思う。俺は、全然おもろしくなかった。監督の大ファンだけれども。
でもこれで、若者にも受けなかったら、これは誰のための作品だったのだろうか。「大衆にはうけなかったけど挑戦したよね」なんて留飲を下げるアニメ玄人のための作品になってしまうとしたら、とてもくだらない話だ。
せめて、監督のための作品であって欲しい。次回作、もっと間口の広い形で上質なアニメーションを、「夜明け告げるルーのうた」で見せてくれたような、素晴らしい「命」をもう一度、今度こそ若者へ、多くの人へ届けて欲しい。
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