「雑誌『Fine』」きみと、波にのれたら いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
雑誌『Fine』
今夏のビッグタイトルアニメの二弾の位置づけになるのか、湯浅監督のド直球青春ファンタジーアニメ作品である。前作の“ルー”は未鑑賞なのだが世界観は似ているらしい。鑑賞後に感じたのが、自分が10代の頃に記憶していた表題の雑誌名だ。全く以て自分の性格や生活とは一切関わることのないサーフィンカルチャーを紹介していた雑誌で、勿論中身は知る由もないが書店に置かれている表紙だけでチャラチャラした雰囲気を発散させているイメージは正に今作品にダイレクトに結びつけられる。拠って、自分にとって丸っきり刺さらないストーリーであった。女子供が喜びそうなマテリアルがザクザク登場し、その世界観の中で切なさ恋愛模様を繰広げる構成は、正に少女漫画そのものかも知れない。監督の特徴ある構図やアングル、人物のフォルムや動かし方、等々外連味は良く理解出来るし特徴が失われていないことは良いのだが、如何せん、展開に深みがない。勿論対象がその深みを要求していないことを見通しての組立だから仕方がないのだろう。波の描き方や動かし方、魚眼レンズを用いた視覚映像、心地よい涼しげな水泡の音響効果等、アニメならではの表現方法は誠に素晴らしいだけに、自分が鑑賞対象ではなかったことが悔やまれる。オムライスの作り方は故伊丹十三監督の“タンポポオムライス”のオマージュ、コーヒーの淹れ方の動画の表現も、決して写実ではないが、その美味しさが100%伝わる表現の幅広さに感服の二文字しかない。なので、自分にとっての今作品の意味づけは、湯浅監督のアニメーション作家としてのテクニックの博覧会をみせて貰ったという心持ちである。
ま、何れにせよ、主人公達のイチャつきはゲンナリだったが(苦笑)