岬の兄妹のレビュー・感想・評価
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しげる
海辺の町で2人で暮らす脚の悪い兄と自閉症の妹の話。
妹は無職、兄は造船所で働いていたが不景気に伴ってクビになり、妹に売春をさせて暮らす様になるストーリー。
重く悲しくやり切れない話ではあるのだけれど、同情を買う様な発言だったり嘘だったり言い訳だったり見栄だったりと兄の甘えや不誠実さが目につき素直に受け入れられない。
序盤のやり取りで警察官の発した「何もわからないよ」が正にその通りだし、これをどう受け止めるかということに尽きると思う。
情があったり本当に必要なら最初から切られないだろうし、枠が空いたからと復職出来ても何も変わらなければ次も候補の筆頭だとは気付けないんだろうなあ…と考えてしまうぐらいにハマった。
生き続けることこそが尊い
日曜の朝から悲劇を観てしまう自分がいる。まだ「アリータ」も「グリーンブック」も観ていないというのに……
これは「赤い雪 Red Snow」に続く圧倒的な悲劇だった。悲劇しかなかった。
自閉症の妹とふたりで暮らす兄。足が悪く職を失い家賃を払う金も無く電気を止められ生ゴミをあさる。兄はふたりで生きていくために訳も分からぬ妹に売春をさせる。
葛藤しながらもそれを続ける兄、そして妹。まったく出口のない閉塞感に息苦しくなる。
彼らのしていることは確かに「犯罪」なのだが、生き続けるための「正しい行為」だと思う。誰に迷惑をかけるわけでもない。
「万引き家族」と同様、観る我々に善悪の彼岸を突きつける秀作。
兄の「罪の意識」が今作を決定的な悲劇とした。
僕に問いかけるもの
この映画の感想を表現するには、僕には言葉が足りない。
社会の片隅とか、社会的弱者といった表現も軽すぎる。
僕が目を背けているものが、そこにはあった。
敢えて、「僕が」と言ったのは、主語が、「私達は」、とか、「社会が」、とか言ったら、自分が逃げているように感じたからだ。
映画を観て、嫌悪感を抱く人もいるに違いない。
そんな圧倒的なストーリーが、そこにはある。
映画の最中は、僕も、二人の結末は悲しいものに違いないと感じていた。
でも、良夫が振り上げたブロックを叩きつけるのを思いとどまったことや、真理子が良夫の苦悩に気付いたこと、エンディングが冒頭のデジャヴのようだが、良夫が造船所の作業着を着ていて、仕事に戻れたんだなと分かったこと、そして、真理子が大人の女性の表情を見せたところに、希望を垣間見て、二人に対して祈らずにはいられなくなる。
生きるとは何なのか意識させられる作品だと思う。
気分が悪くなるほど辛い
映画って色々な表現が出来、色々な事が伝えられる手段でもあります、しかし、また違う言い方をすれば、虚構の世界でもあります。
本作品、制作側が本作品を作り何を言いたく、何を表現したかったのか分かりませんが、私的には、あまりにも見ていて「辛く」、例えば本作品に関する「怒り」や「哀しみ」「切なさ」を何処にぶつけて良いのか・・・・「神様」なのか、「国」なのか、「兄」なにか、「妹」なのか・・・・・
また、見方を変えれば、「自分より下はいる」だとか、「虚構の話」と目を伏せる事も出来る・・・・
私自身、本作品に対して、何と評価すればよいか、どう考えていいのか分かりません・・・・・
勿論、同情もありますが、何ともいいがいたい・・・・
役者さんの演技は大変に素晴らしく、大変にリアリティがあります。
しかし、本作品って実話じゃないですよね・・・・・
私自身、本作品、最初から終わりまで、ある意味、気分が悪くなるほど辛い気持ちになりました。
笑えた瞬間から、別の映画に見えてくる
タブーに切り込んで人間の本質をあぶり出す衝撃作!そんな韓国映画に驚かされる度に
「70年代ならともかく、今の日本の映画界ではまず作れないなぁ。。」と感じていましたが
ついに肝の座った監督登場!かなり深々と斬り込んでくださいました。
クラウドファンディングさえ利用せず全て自費とは驚きましたが、誤解を恐れず逃げが無い作品を撮り切ったストイックさにも痺れました。
張り切って鑑賞させていただきましたが、やはり、文化の違う隣の国のお話と、実際に日本が舞台で日本語で語られる物語とは全く違っていて、思っていた以上に生々しかったです。(^◇^;)
でも、胸をえぐられるようなシーンや、思わず目を背けたくなるシーンのなかに、笑えるシーンも沢山あって…
正直、最初は笑って良いのか戸惑いました。
このシチュエーションで笑ってしまうのは不謹慎なのでは??
そんな思いが心のどこかでブレーキをかけていたのだと思います。
でも、思わず吹き出して、声に出して笑ってしまった瞬間を境に、それまでとは全く違った映画に見えてきました。
ネタバレしない程度で例えると…
「必死なお兄ちゃんを尻目に、マイペースな妹との噛み合わない会話」で笑えなかったのは、どこかで私が二人を社会的弱者だと思っていたから。
お年を召した方に妹が「シワシワ」と言うシーンで笑えなかったのは、そんな事を言っては相手に失礼だと思っていたから。
でも、わざわざ口に出す事はなくても、そもそもシワがあるのは悪い事なの?
健康であることは大切だけれど、必要以上なアンチエイジングで、シミシワを無くそうとする風潮で、自分の中に変な価値観が植え付けられている事に気づかされました。
そんなペラペラな固定概念への問いかけは各エピソードに散りばめられていて、その一つ一つが無理矢理剥がさていく事で、初めて固定概念とは別の世界に生きている妹の喜びや悲しみに気づくことが出来る。
“社会的弱者=気の毒な人、可愛そうな人、助けてあげなくてはいけない人”ではなく一人の人間として身近に感じる事ができたタイミングで、笑えた気がします。
本作は、決して福祉や支援の届かない社会を憂う映画ではない。
むしろ社会やマスコミが植え付けた上辺だけの固定概念を捨て去ったところで、「人間が生きるということはどういう事なのか?」をとことん描いている作品だと思います。
それはシンプルな欲求。“食欲、性欲、睡眠欲”だったり、一緒にいる心地良さだったり。
かなりの荒療治ですが、心のリハビリになりました。
もちろん映画としても素晴らしく
今は亡き安西水丸さんが「2、3秒でも良いシーンがあればいい。」とおっしゃっていましたが、
ピンクのチラシ
窓ガラス越しの会話
女医の一言
そして何と言ってもラストの表情
私の中では、一生忘れられないシーンとなることでしょう。
今年の話題作になりそう
障碍者の性に関してはどこまで本当のところなのか自分には分からないが、いろいろと問題と話題を呼ぶであろう作品。
テーマは重いのに笑っちゃう場面が多く、それは兄妹の生命力と無垢さゆえなのだろう。松浦祐也さん、和田光沙さんの演技がキラキラしていて釘づけになる。
光の使い方、映像の力強さ、ディテールの細かさなども心に残る。
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