劇場公開日 2019年3月1日

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「体が悪いのぢゃない。只運が悪いのだ。」岬の兄妹 コバヤシマルさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5体が悪いのぢゃない。只運が悪いのだ。

2022年11月19日
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鑑賞方法:VOD

笑える

難しい

幸せ

内容は、板野家の生き残りチンバの兄シゲオとハクチの妹マリコが岬近くの借家での筆舌に尽くし難い生活を映像化した昭和の色彩を感じる事の出来る胸詰まる苦しさが見応えのある作品。印象に残った言葉は『逃げないで』産婦人科で堕胎手術を受ける時にDr.が呟く言葉。生きたいと云う気持ちと生きたくないと云う気持ちが映像と台詞でテーマとして伝わってくる。印象的な場面では、クローズダウンで浜辺を低いカメラで3人を押さえながら引いて写すシーンが非常に冷たくて人の内面を表す様な表現は素晴らしい。世間は冷たくも温かくも無く感じる人次第だとは思いますが、その世の中で家族の複雑さと温かさを感じる人間の矛盾が表現されている所は脱帽です。売春を斡旋する兄も妹を性的に見て居た過去を隠しながらも面倒見ようとする呪いにかけられ、売春で出逢う同じ障害者同士の内集団との関係は絶妙で、役者さんの兄と妹役の表現力の凄さには驚きます。岬と云う生死の狭間で生きようとする人々には目を見張るものがあります。物語の最後妹が岬に立ち振り返る時の表情と電話をとる兄の表情には幸せとは言えない刹那的な絶望が胸を打ちました。短い尺の映画ですが非常に人間の矛盾を的確に描いた面白い映画だと思います。でも見た後は元気でないなぁ。

コバヤシマル
コバヤシマルさんのコメント
2024年7月27日

 コメントありがとうございます。
確かに!最後の場面。妹の観客に対して何か言いたげな表情は、兄と同時に観客に向けられた者だと自分も感じます。
 やるせなく追い詰められた兄妹のは、観客自身の投影であり、自分自身に励ましを与える様な意味での電話だったのかもしれませんね。

コバヤシマル
病人28号さんのコメント
2024年7月27日

あの電話は誰からの電話と解釈しましたか?私は客からの電話だと思いました。

病人28号
コバヤシマルさんのコメント
2022年11月20日

コメントありがとうございます。いぱねまさんのコメントも非常に感服しました。特に物語がドライブを掛けて居たたまれなさに突っ込むの表現や作品を通して予定調和に進まない心の機微を掴まれるとの表現力にはなるほどと感心しました。面白い作品に出会えた事の喜びを少しでも言葉に出来たら素晴らしいですね。

コバヤシマル
いぱねまさんのコメント
2022年11月20日

的確なレビューで感服致します

いぱねま
コバヤシマルさんのコメント
2022年11月20日

コメントありがとうございます。最後の場面は二人の表情力が半端無かったですね。アバンタイトルの真っ赤な字も暴力的に感じました。あまり人にはオススメ出来ませんが面白い作品でしたね。これを機にさがすも観てみます。

コバヤシマル
琥珀糖さんのコメント
2022年11月19日

ラストの表情
私は妹しか見てませんでした。
兄の表情にも、
〉幸せと言えない刹那的な絶望が胸を打ちました。
もう一度ラストをみてみますね。
役者も凄いし、何か切羽詰まった感情になる
強烈な映画でしたね。

琥珀糖