「社会派じゃない所が良い」岬の兄妹 ニックルさんの映画レビュー(感想・評価)
社会派じゃない所が良い
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気になる箇所は幾つかあった。特に警官の友人から社会保障を巡る話が一度も出てこない所はモヤモヤを残す。ティッシュの銘柄がKYなのもちょっと寒い。
その辺を差し引いても近年の日本映画でこれをやってる人多分いないんじゃっていう意味でも傑作。とことん貧乏でバカで、人間としては欠陥だらけなんだけど、最後の最後の所でギリギリ憎めない兄貴。精神障害の負の部分を観る人に突きつけながらもどこか明るく癒しさえもたらす妹。
性的な過去を巡る兄と妹の微妙な関係性も含めて今村昌平の映画のようだった。
ラストは妹が死ぬとしたい気もする所だけど、予算的に無理だろうな。決して悪いラストじゃないけど、代替品な感じは否めなかった。
白眉は妹がヤクザとセックスしてるのを見せられると同時に少年時代に妹のオナニーを目撃した事を思い出すというくだり。このシークエンスがあるから、社会保障に頼らないという筋がギリギリ成立している。
「兄は妹の幸福のために売春をやめなかった」とも取れるし、「自分もそんな事で興奮するクソ野郎だから踏ん切りがはっきりついたのだ」とも取れる。共感させるのではなく、目を見開かせるという手段の映画がもっと観たい!
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