劇場公開日 2019年3月1日

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「一線を越える」岬の兄妹 Kjさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5一線を越える

2019年12月29日
iPhoneアプリから投稿

窓にぶら下がってまで積極的に越えてしまっている。まるでそこに線が引かれていることを判別する思慮すらないようだ。ハンデのありすぎるこのふたりであれば、どの時代にあっても社会の底辺に追いやられるのかもしれない。社会保障に頼る術すら得ない、社会に生きる場所が見出せない。こちらもどうやったら救い出せるか、方法が思いつかない。現代の貧困がテーマというよりも、もがき生きる人の様を描いているように感じた。これでも生きるべきか、生が与えられるべきかという問いかけに呼応する堕胎シーンは、こちらの倫理観を揺さぶってくる。
不正な金を得て、自らに日の目を与えたり、中学生相手に優越感を得たり。しかし勝手な期待に社会は応えない。矛盾が増幅する。終始騒ぐ妹はそのノイズの中で感情が届きにくいが、そこは見事に演技、演出されていて、彼女の機微が伝わってきて実に切なかった。
ブランコに股がる少女のシーンは、このシーンを撮ること自体の倫理性に疑問を感じた。

Kj