劇場公開日 2023年9月22日

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「夫婦間のジェンダーフリーを、ケイト・ブランシェットの見事な演技があぶり出す」バーナデット ママは行方不明 talkieさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0夫婦間のジェンダーフリーを、ケイト・ブランシェットの見事な演技があぶり出す

2025年4月17日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

本作のリチャード・リンクレイター監督は、主として恋人同士という局面での男女の機微を描いてきたといえるだったと思いますけれども。

そういう位置づけでは、今作は、結婚生活という局面でもの男女の機微、そして、家庭の中でのジェンダーフリーの問題を描いたとも評することのできる本作は、同監督の作風のなかでも、新たなページを開いたともいうことができるのではないかとも、評論子は思います。

本作のバーナデットは、育児に専念するために、キャリアを捨てて家庭に入ってはみたものの…。
つまり、有能な建築家としての、その個性・エネルギーを内に封じて、とある家庭の平凡な主婦として過ごしていたものの、隣家とのトラブルから押し殺していた個性・能力、そしてエネルギーが一挙に炸裂し、遂に南極まで飛んでいってしまった、というのが実相だったのだろうと、評論子は思います。

夫・エルジーとしては、ちゃんと妻・バーナデットを見て、その個性を無碍に圧殺してしまわないような配慮が求められていたのに、彼は、そのことに思いすら至っていなかったということなのでしょう。
「女性は、嫁(か)しては家事や子育てに勤(いそ)しむのは当然」という考えが、エルジーの思惟のどこにもなかったと、果たして断言できるでしょう。

総じて、本作が世の亭主族に対して言わんとするところは「ぼんやりしていて、あたら奥方の才能を家庭に封じ込めるようなマネをしていると、いつか彼女は出奔して行方不明になりますよ」ということなのだと、評論子は受け止めました。

ややコミカルには描かれてはいるのですけれども。

しかし、上記の「真理」を見事にあぶり出した点を評して、佳作としておくことが適切と、評論子は思います。

(追記)
本作のキャスティングとして、本作の主人公ともいうべきバーナデットに、ケイト・ブランシェットを起用したことは、評論子は「はまり役」だったのではないかと思いました。

別作品『TAR/ター』などでも芯の強い女性をみごとに演じた彼女の演技が、本作でも遺
憾なく発揮されていたと思うからです。

talkie
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