劇場公開日 2019年8月2日

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「正統派の描き方だが、感動的」風をつかまえた少年 悶さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0正統派の描き方だが、感動的

2022年5月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

(このレビューは、2019年8月に劇場鑑賞した直後に綴ったレビューです)

アフリカ・マラウイで、干ばつの危機を救った少年の実話。
ということで、よくある感動物語とも思ったのですが、題材のユニークさと、舞台がアフリカで、あまり目にすることがないこともあり、鑑賞してきました。

この映画の舞台は、マラウイというアフリカの国ですが、私は、その存在を知りませんでした。Wikipediaを見ると、アフリカ南東部の日本の約3分の1の大きさの国です。

映画が始まると、「BBC」のロゴが出てきて、このサイトの紹介文にも、制作国に「英」と入っていたのを思い出しました。
これは、マラウイの歴史にも関係があって、1964年に独立した国なのですが、イギリス連邦に加盟しているそうです。その辺りから、イギリスが関係してくるのかな、と。

映画が始まると、登場人物たちが、まず英語で話していることに気づきます。
イギリス共同制作なので、世界市場を狙って、英語で話す設定か、と思ったのですが、そうではありませんでした。
イギリス連邦の国のため、公用語として、英語があり、現地のチェワ語を併用しているとのこと。
実際、映画の中でも、公の場では、英語を使い、内輪で話す時は、現地語で話しています。
そういう意味では、ドキュメンタリー風の作りです。

さて、映画の中身なのですが、これは、分かりやすいお話になっています。
2001年に、マラウイは干ばつに襲われます。作物が全く育たない危機を深刻に受け止めた主人公の少年は、学校の図書館でエネルギーに関する本を目にします。
ここで学んだことをもとに、風力発電の仕組みが活用できることに気づき、手近な材料から、風力発電で、モーターを動かし、地下水を汲み上げて、畑の水不足を解消することを思いつく…。

面白いのは、「自転車」の存在です。
作品紹介の写真に、少年の左側に車輪が映っています。
これは、自転車の車輪で、この写真では切れてしまっていますが、ポスターで見ると、上部にある風車と繋がっているのです。

風力発電に、なぜ「自転車」なのか?
ここは、ネットで巧く説明されている記事があるので、ご一読ください。
出来れば、予備知識として有益なものなので、鑑賞前に読むことをオススメします。

物語展開として、私は、自主制作映画的な、抽象的表現多めかも、と少々不安がありましたが、そこは、BBCが関係しているだけあって、ドキュメンタリー風ながらも、ドラマのツボはきちんと抑えていて、分かってはいるけど、風力発電の起動に成功するシーンは、胸に迫るものがありました。

ちなみに、この主人公の少年ですが、本名がWikipediaに載っているほどで、世界的に有名な人物のようです。
確かに、10代で、干ばつの危機を救うくらいですから、相当優秀な人物なのは間違いありません。

そこで蛇足をひとつ。
主人公の少年は、図書館で、エネルギー関係の書物と出会う訳ですが、これは、英語の本なのです。
先述のとおり、マラウイは、公用語が英語なので、彼は、その本を理解できた訳です。
アフリカの各国の公用語は、植民地時代の影響から、英・仏・西・葡に併せ、現地語併用が多いそうですが、もし、世界的な影響力のある英語を使えなかったなら、いくら優秀な人物であっても、この奇跡はなかったかもしれません。

悶