「カメ止めか!途中退席しようとした人が2人」バイス kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
カメ止めか!途中退席しようとした人が2人
テーマが絞り切れてない気もして、ちょっと肩透かし食らった感じでした。これなら『記者たち』の方が見やすいし、内容もわかりやすかった。テーマを9.11以降に絞らずに、60年代まで遡ってディック・チェイニーの伝記を見せられた気分になった。映像の編集の仕方はまるでオリバー・ストーン作品のようで、社会派であるが、ちょっと小難しい作りになっている。ただ、シニカルなコメディパートについていけなかった人、中盤で政界を引退したときにエンドロールが始まったところで笑えなかった人、イラクに大量破壊兵器が本当にあるとまだ信じている人には向かないのでしょう。途中退席しようとしたおば様二人は結局退席してしまった。
たしかに妻リンの内助の功とか、父ブッシュに仕えて、子ブッシュから副大統領の打診がある流れは必要だったかもしれません。そこまでやるなら石油会社のCEOになった時点で、「中東の石油は全部俺のものだ」的な、引退しても悪魔のような性格だったことを見せてくれてもよかったかな。まぁ、石油利権という点では他にも影響しそうだから控えたのかも・・・
「一元的執政府論」という言葉が何度も出てくるのですが、大統領制を逆手にとって議会の承認を得なくてもよいことを前面に出してました。バイスが大統領の耳に囁くだけで戦争もできる仕組み。子ブッシュもバカだから、「俺もフセインを潰したかったんだ」と同調する始末だ。ここでのやりとりが世界を動かしたと考えると、恐ろしいものがある。現代ではゴルフ場で密約がされるのかもしれませんが。
個人的に一番面白かったのはウェイターのアルフレッド・モリーナがとんでもないメニューを説明しているシーン。散りばめられたブラックジョークの中でも最大級のものだったと思います。また、ナレーターだと思ってた人物(誰?)が車にはねられ心臓を提供するというブラックなところも。