「Adam McKay」バイス vary1484さんの映画レビュー(感想・評価)
Adam McKay
The following is a true story. Or as true as it can be given that Dick Cheney is known as one of the most secretive leaders in history. But we did our fucking best.
このフレーズこそ、この映画の角を担っているようだ。9.11のテロが起きた、現代史でも最もショッキングだった事件の背景にある政治のさらに裏の部分でパペットマスターのように黒幕の役割を担っていた副大統領、ディック・チェイニーの半生を描いたまっすぐな映画。アダム・マッケイの作品はとても知的で、経済や政治・メディアといったニュースになった話題を扱ったものが多い。ただ単に1つの事件を追うのではなく、その事件には知られざる要因があり、この人物が関わっていたんだという、かなり一方向から描く作品ばかりである。
今作に関しても、自分では絶対にたどり着けないような脚本。かなりの史実や知識が必要でインタビュー・調査の数は計り知れない量でしょう。それゆえ、単純に自分の知識のなさに失望するとともに、新しい史実を知れたことへの好奇心で映画を楽しむことができた。今回の映画で鍵になってくるのは、”Unitary Executive Theory”でその概念のバカバカしさ、国民を置いてけぼりにしようとする政府の陰謀に拍車をかけることがテーマとなっている。観るべき価値のある映画。ジャンルとしては、少しエンターテインメント性から離れたところであるが、そこにアダムマッケイ監督の手腕が光る。
誰が観ても普通の映画でないことはわかります。話に直接関係しないキャストのナレーション。ストーリーには全く関係のない資料映像を使ったモンタージュ。ドキュメンタリーのように風刺テイストたっぷりの音楽のチョイスなど、映画として目を引く要素は逃しません、難しい題材+描かなくてはいけない史実の量という難題を乗り越える編集の力。役者さんたちの演技は言わずもがなですが、この映画のように、シリアスとコメディが混在するような映画は、撮影されたフッテージをどれだけまっしろなキャンパスで受け入れられる映画を書き直す作業が必要になってきます。どれだけパズルのアイデアがあるのか、そのアイデアをどれだけうまく組み合わせられるのかというのはまさに編集者の力。
本作では、100%やり切れた印象はありませんでした。途中の史実を述べ、”Unitary Executive Theory”の導入するあたりから、どれだけの視聴者がついてこれたのでしょうか。このジャンルに正解はないので、どうこう言えませんが、テーマの選択から宣伝・配給までが映画であることが改めて明確になりましたね。