「どちらかといえば恋愛映画ではない」ビール・ストリートの恋人たち つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
どちらかといえば恋愛映画ではない
アフリカ系アメリカ人同士の恋愛映画。というだけでちょっと珍しい。それだけで本作も内包している差別というものがどんなものかわかる。
しかし自分は逆にこう思うんだ。
結局、アフリカ系アメリカ人や人種的マイノリティの窮状を訴える作品だったわけで、ただの、普通の、恋愛作品じゃいかんのか?と。
アフリカ系アメリカ人が出てきたら苦しみを訴えなきゃならんというわけでもないでしょう。もういい加減ウンザリなんだ。
普通の、ちょっと辛いことがあって、それでも幸せを掴むみたいな、白人同士の恋愛映画のようになぜ出来ない?
これがすでに差別的なのでは?と考えずにはいられない。
いきなり文句から入ってしまったが良い作品なのは間違いないと思う。
どちらかといえば恋愛より差別をテーマにしていると思うので、なんだ結局いつもの感じかと不満に思いながらも最初の指摘は的外れともいえるから。
主人公ファニーは自分にできる精一杯で幸せを掴もうとする。典型的レイシストな白人が嫌がらせや妨害をしてくるが、そんな中で、メキシコからの移民のウェイターやユダヤ人の大家など、アフリカ系アメリカ人のファニーと同じように差別される側の人々が親切にしてくれるところは、露骨に白人に対する逆差別ではあるが、良かったと思った。
それでも、ファニーよりも更に酷い思いをしたマイノリティは彼を助けてはくれない。この辺でバランス取ってるのかな。ファニー目線で美談になりすぎなかったところも好感が持てる。
あとは淡い感じの色調が美しかったね。特に衣装ワークは良かった。
すでに書いたように良い作品だとは思うんだけど、展開が穏やかすぎるせいかあまり面白くはない。
最後に、仕事場の物を盗む、みたいな軽犯罪は犯罪に数えないよ。的なところはアメリカはやっぱりアメリカだなぁと、呆れる。