「秀作ではあるが、今回もまたバリー・ジェンキンスの感性が合うか否か」ビール・ストリートの恋人たち 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
秀作ではあるが、今回もまたバリー・ジェンキンスの感性が合うか否か
『ムーンライト』でアカデミー作品賞に輝いたバリー・ジェンキンス監督の注目の新作。
世界を魅了した『ムーンライト』同様、黒人社会の厳しい現状や一途な愛の行方を、監督の美しい感性で綴られている。
1970年代のNY。黒人たちのコミュニティ、ビール・ストリート。
そこで暮らす22歳のファニーと19歳のティッシュの若者カップル。ティッシュは妊娠し、貧しいながらも幸せな日々を送っていた。
だがある日、ファニーは些細ないざこざで白人警官の恨みを買い、無実のレイプ容疑で逮捕されてしまう…。
恋人の無実を証明すべく奔走するヒロイン。
直面する苦難の数々…。
この時代、逮捕されたハーレムの黒人青年の事など誰が気に留めようか。理不尽な差別、迫害…。
力になってくれる筈の身内からも。恋人の母親はティッシュに憎しみをぶつける。
幸せだった頃の過去と、辛く苦しい現在が交錯。その対比が切ない。
そんな中でも、担当してくれる事になった白人弁護士や恋人の白人の親友。黒人社会の陰の中に差し込む光を反映。
本作でアカデミー助演女優賞受賞、ヒロインを支える母親役のレジーナ・キングの演技と存在は頼もしい。
初々しい主演二人。オーディションで選ばれたヒロインのキキ・レインが光る。
静かで繊細、美しくムーディな映像、音楽、ストーリー、演出、感情…。
実は、『ムーンライト』があまり肌に合わなかった自分。
今回は『ムーンライト』より、話的にも題材的にも入り易いと感じた。
…であるのだが、正直、ドンピシャに肌に合ったとは今回も言い難い。
好みというより感性の問題なので、こればっかりはどうしようもない。
また、冤罪の行く末も。黒人社会のメッセージは込められているが、もう一味欲しかった。
連続で秀作放つバリー・ジェンキンス。
だが、個人的には今回もホームランとまでは行かず。
次回作は…?