「絆を持って生きる」ビール・ストリートの恋人たち むっしゅさんの映画レビュー(感想・評価)
絆を持って生きる
オープニングの映像を見ながらカメラワークの美しさに心奪われました。全編通してあらゆるショットが印象的に捉えられていてアート性の高さを感じます。監督の前作「ムーンライト」でも同じような印象を持ったことを思い出しました。
そんな心地良い中で進められていく物語は、黒人の厳しい現実を描いているのですが、これは今までの映画でも多く語られていた事なので目新しさはなく、それゆえドラマ的には物足りなさもあります。
傑出したのはヒロインの母親の演技。飛び抜けて素晴らしい。白人警官の横暴で捕まった黒人青年。よくあるパターンのドラマが、この母親の存在で、事件の裏には多くの人々の苦しみ悩み、怒り悲しみが存在しているんだという現実が突きつけられます。ドキッとする瞬間。
そして時間軸を変えて描かれる “恋人たち” の初々しい恋愛シーン。目と目だけで十分伝わる無垢な演技がまた素晴らしい。そんなふたりが理不尽な運命の中でもしっかりと絆を持って生きるという設定はとても共感できます。
惜しむらくはその他の登場人物が一過性のもので終わってしまっている点と、淡々としてダイナミックさのないストーリーが見ている人の好みを分けてしまうのかなと感じた点。これは「ムーンライト」でも同じでしたね。
コメントする