「誇りを失わず生きることの美しさ」ビール・ストリートの恋人たち とえさんの映画レビュー(感想・評価)
誇りを失わず生きることの美しさ
今年のアカデミー賞で脚色賞、助演女優賞、作曲賞の3部門にノミネートされている作品
「ムーンライト」のバリー・ジェンキンス監督の作品
前作の雰囲気そのままに
知的で、力強くて、美しい映画だった
1970年代のハーレムで生活するティッシュ(キキ・レイン)とファニー(ステファン・ジェームズ)
幼い頃から友人同士だった彼らは、大人になると愛し合うようになる
やがて二人は、将来について考えるようになるが、そんな幸せの絶頂にいる彼らを地獄へ突き落とすような事件が起きてしまう
ファニーは22歳、ティッシュは19歳
そんな若い二人に、次から次へと試練がやってくるのだ
ファニーは身に覚えのないことで逮捕され、挙げ句の果てに刑務所に収監されてしまう
そして、その後間もなくティッシュの妊娠が発覚
それがもしも自分の身に起きたらと考えたら、絶望的な気持ちになってしまう
しかし、この映画のティッシュとファニーは、絶望的な状況でも、希望を失わず、常に毅然としている
その強さが美しくていい
そんな彼らの姿を観ていると
とても悲しいことだけど
「人種差別を受けるのは当たり前」で、それは生まれついた運命として受け入れているように見える
その上で、たとえ尊厳を傷つけられても、人間としての誇りを最後まで失わずに生きている
その強さが美しいのだ
ビール・ストリートとは、音楽の街メンフィスのメインストリートの名前だという
その通りでは、多くのジャズミュージシャンが生まれてきた
ビール・ストリートは、そこで、多くの偉大なる黒人アーティストの誕生を長い間見守ってきたのだ
もしも、そんなビール・ストリートが、ティッシュとファニーを観たら、何と声をかけるだろうか
彼らは、どんなに尊厳を傷つけられても屈しない生き方を誇りにするべきだ
この映画は、昨年のアカデミー賞で話題になった「スリービルボード」にも、通じるところがある
つまり、1970年代も、現代も、人を人種によって判断する差別主義者が存在するということ
しかし、そんな人間に負けることなく、誇りを失わずに毅然として生きることの美しさを感じる作品だった
本当に素晴らしい映画なので、ぜひ、多くの人に観て欲しい作品