「り込みすぎて微妙な食い合わせに」さらば愛しきアウトロー しずるさんの映画レビュー(感想・評価)
り込みすぎて微妙な食い合わせに
ロバート・レッドフォードの引退作とい
う事で、ひたすら彼へのリスベクトが詰まった作品。
おじいちゃんになっても、格好良く、ジェントルで、セクシーで、愛嬌がある、魅力たっぷりなロバート・レッドフォード。
老いらくの恋のお相手、シシー・スペイセクも、お婆ちゃんながら、明るく活発で、少女のように恋にときめく可愛らしい女性像を見事に演じている。
非暴力の強盗・タッカーを追う刑事ハントとの、ライバルを認め合うような複雑な心情と関係もいい。
反面、物語としては、少々食い合わせが悪かったというか…。
暴力に訴えず強盗と脱走を成功させるカタルシス、老いて尚現役を志し続けるプライド、孤独と老いの寂しさ…のようなものを盛り込みたかったんだと思うが、いかんせんやってる事は銀行強盗、動機は自らの快楽なので。
例えば、西部劇のような無法地帯でやんちゃで自信家の青年が若気のいたり、みたいなのだったり、体制に反発してわざと法に反する行為を繰り返す、とかだったら、カタルシスは得られたかも知れないし、レッドフォードの最後の勇姿と老強盗を重ね合わせて、しんみりしたりもしたのだが、老いを共にするバートナーを得て、尚衝動的とも言えるような犯罪を止められなかったというのは…。
これはもはや病気なんだな、と、爽快に思うよりなんだかゾッとしてしまった。
こういう人は、他人と家庭を持ってはいけないだろう。時に寂しさ心潰える事もあるのは解るけれども。
クライムものと老いのテーマが、悪い方に相乗してしまった感じ。
もっと『愛しの』と思える方向に舵をとる方法はあったように思う。
実在人物を下敷きにしているだけに、余り派手な創作要素は付け加えられなくて、リアルに寄った描き方になったのかも知れないなぁ。
私にはどうにもスッキリできない作品だった。