「ゴヤの絵のように悪魔的に美しい映画だった。」ちいさな独裁者 Ishikawa Peroさんの映画レビュー(感想・評価)
ゴヤの絵のように悪魔的に美しい映画だった。
第2次世界大戦の終戦間近のドイツ。敗戦が濃厚になったナチスドイツ軍では脱走兵が後を絶たず兵士達による略奪が行われていた。
脱走兵のヴェリー・ヘロルトは命からがら逃げている途中で軍用車両に打ち捨てられたナチス将校の制服を見つける。
その制服を着ることでヘロルトは大尉として扱われ、暴君へと変わっていく。
嘘のような本当の話。
このヴェリー・ヘロルトは実在の人物。
しかも最悪な事に劇中で起こる脱走兵の収容所の虐殺も本当の話。
なぜ20歳のあどけなさも抜けない青年がこんな凶行を行なったのか?
本人のサイコ的資質が戦争という時代にマッチしたんだと言えば簡単だけれど、私はどんな人でも何かのきっかけがあれば暴走すると思っている。
それを冷静に受け止め、本気で止める人がいない限りにおいて。
ヘロルトは軍を脱走するくらいだから弱い人間だと思う。だから弱い人に寄り添えるかと言うとそうではない。
理想もなく、自己保身が一番で自分さえ良ければいい。
私も含め誰しもそうだと思う。
この映画は戦争映画では無く、人は自分の都合のためにどう振る舞うかを描いている。
だから普遍的でどんな話にも当てはまる。
自己掲示欲の強い人たちが声高に叫ぶ世界で、私達はこの物語を直視しなければいけない。
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