劇場公開日 2019年10月4日

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「芸術の技術と表現とは」蜜蜂と遠雷 シューテツさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5芸術の技術と表現とは

2020年7月12日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

いつも通り、原作は未読です。
ピアニストの物語という以外どういう作品なのか予備知識ゼロで鑑賞しましたが、中々興味深く観れました。
それは本作を観る少し前に、知人で絵描きの方がSNSで芸術の技術と表現についてつぶやいていたのが頭の隅にあり、それが本作の内容と重なり色々と考えさせられたのでより面白く鑑賞出来ました。
私は基本的に“芸術”って言葉は“愛”とか“神”という言葉と同様に、目に見えない実体のない人それぞれに異なる概念を持つ意味不明の言葉だと思っているので答えは持ち合わせていませんが、それら全て不思議と人間を惹きつけ虜にする大きな力がある言葉だとも思っています。
芸術って色々あり、絵とか彫刻とか小説とかは基本的に一人の創作・表現となりますが、音楽ってまず作曲家がいて演奏者がいて創作と表現と分担作業になる芸術であり、クラシック音楽となると何百年前の創作者と現在の表現者という事になってしまい、創作と表現と二つの芸術を考えなければならないので余計に難しく感じてしまいます。
少し前にクラシック音楽というジャンルの演奏について(特に独奏ではなく合奏に於いての話だと思う)は、楽譜が全てであり「楽譜を如何に忠実に演奏するか」だけが重要であり、(楽譜を完璧に再現できる技術があれば良いのであって)自己表現は無用の世界だと言うのを聞いて成程と思っていました。しかし、創作・表現には必ず個性が出てしまうので、それを消し去るってことも至難の業の様にも思えるのだが、絵画で言うと贋作の技術に近いのかも知れないな。
本作ではクラシック音楽の天才的に技術が秀でた演奏者の場合、技術以外の自己表現の広がりがあると言ってるように思えました。この辺り原作ではどうなのか非常に気になるところです。

シューテツ