劇場公開日 2019年10月4日

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「私の知らない未開の世界を見る面白さ」蜜蜂と遠雷 まつこさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0私の知らない未開の世界を見る面白さ

2019年10月4日
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映画っていうのは、自分が知らない世界を見れる、少しなりとも自分のものに出来て体感が出来る媒体なんだなぁという事が身を持って実感出来た作品。多分、食や性や恋などのほぼ多くの人間が持っている欲に重きを置いている作品というのは多少なりとも確実に共感が出来て、"共感が出来る"という意味でとても面白くて楽しい内容なんだけど、自分(私限定)が踏み込んだ事の無い世界…例えば警察や医療や力仕事、芸能界、闇金、暴力、反社会、競技かるたや囲碁、将棋なんてのも分かったふりしてその現場に居たことが無いから、そういう"未開の地を覗ける"作品と言うのは100%の理解や共感が出来なくともまた違った面白さや興奮やワクワクがあると思った。ピアニストという音楽家においても同じ事が言えた。とても特殊な人生でポリシーを持った人達が突き進む世界。
この映画は、ピアニストの世界を4人の異なる背景をもったコンクールの挑戦者たちを通して描いていて、それがまた面白かった。テーマとして、「ピアノ」というくくりだけではなく「音を楽しむ・表現する」というピアニストの世界に関して素人の私でも分かるところまで描いていてくれてそれも良かった。
その為、音を大事にしている作品だった。ピアノの音だけじゃなく自然の音や人が出す音が心地良く響いているシーンが沢山あって良かった。あと、こういう感想はあまり好みじゃ無いんだけど、映像が全編ずっと綺麗だった。編集?かカメラ?の種類的なものもあって色が綺麗で…あとは撮り方や映画独特のあの画角に収めるレイアウトなど…綺麗でおしゃれだった。(ここは日本の何処なの?と何度も驚いた)
映画の内容によっては無駄におしゃれだったりミュージックビデオみたいだったりインスタ映え的な映像だと作品として失敗してしまう可能性もあるけど、この綺麗な音を奏でるピアニスト達の映画という点では絶妙にマッチしていてとても気持ちが良かった…監督分かってる。この石川慶監督に関しては、「愚行録」だけ観たことがあって、あの映画はストーリーがあまり好きじゃなかったから映画自体は「…」と思ってしまっていたけど、愚行録のようなストーリーの映画のジメッとした気持ち悪い空気感や、今回のような透き通る音色のシーンが多数出て来る作品の綺麗な空気感を映像で表現してて、そう考えると「愚行録」も結構良かったなと思えた。
俳優陣…松岡茉優、松坂桃李、森崎ウィル、鈴鹿央士、凄いねえほんと。ピアニストじゃないのに…あんな事出来るんですね。俳優ってバケモンみたいな職業だなーと改めて感心してしまいました。広瀬すずが昔「先生!」という映画の撮影中にエキストラで参加していた高校生を発見してマネージャーにスカウトさせた…そんな背景のある鈴鹿央士…。物凄く今回の風間塵という役、ハマり役やないか…。松岡茉優演じる天才ピアニスト栄伝亜夜が練習しようとした矢先に忍び込んで来て一緒にピアノを演奏するシーンとか超良かったんだけど…笑。あと演奏する指も魅入った。私は指とか手フェチというのが全然分からないけど、鈴鹿君の演奏する手や指はガン見してしまった。栄伝亜夜の演奏するシーンも、手も含めて全て圧巻ですよ…。
恐らく小説を読まないと分からない細かい設定や過去、トラウマや各種キャラクター達の想いがあるんだと思いますが、そこを置いておいても雰囲気で楽しめた。映画ってのは100%理解して楽しめない作品だとしても雰囲気が楽しければ途中でウトウトすることも飽きることもなく入り込めるんだね。こないだ「HELLO WORLD」を観た時も頭が混乱して爆発しそうにもなりつつ、雰囲気や続きやラストが気になってちゃんと楽しめたので、自分が理解しにくいストーリーや世界の話でも雰囲気で楽しんで良いんだなぁーと映画を観るということに対して肩の荷が少し楽になった今日この頃でした。
終わり方も良かったな。
あと個人的に自分の好きな事に対して没頭してる人萌えなのでそこもめちゃくちゃ良かったです。萌えました。
素敵な作品でした。

まつこ
まつこさんのコメント
2019年10月8日

ありがとうございます!
心に残る作品でしたね◎

まつこ
CBさんのコメント
2019年10月8日

まったく、同感です。ナイスレビュー!

CB