笑顔の向こうにのレビュー・感想・評価
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表層的な歯科啓蒙映画
歯科衛生士の真夏(安田聖愛)と歯科技工士の大地(高杉真宙)は幼馴染、金沢から上京し、一人前になろうと懸命に働いている、そんな二人が偶然出会い、励まし合って愛が芽生えてゆくといった青春映画。
歯科衛生士とか技工士とか脇役と裏方にスポットを当てているのも珍しいと思ったら製作は日本歯科医師会の8020運動30周年事業の一環だそう、8020運動とは80才で20本の歯を残そうという啓蒙運動。歯周病が万病のもととか口腔ケアの大切さは身に染みて理解できるし、お世話になっている歯医者さんには感謝しています。
ただ、未だに不気味な音を発するルーターで歯を削るなど野蛮な治療法だし、歯科医院もコンビニより多いと言う過当競争、先生は一人で何人も掛け持ち、軽度の患者は衛生士まかせという実態には進歩と改善を望みたいところです。
モナコで賞をとったようなので私の見方が悪いのかもしれませんが、映画では自分勝手で乱暴な口のきき方の患者とか土木作業員のような風体の医師とか奇をてらい過ぎのキャストと演出、妊婦もお腹だけ膨らませて軽快に歩くさまは嘘っぽい。ドラマツルギ―とはいえ、父子の確執や祖母の病気など表面的になぞるのはワイドショー並みのセンスです。もう少し、人間を掘り下げて描いて欲しかった。
知ってた
あらすじを読んだ時点で既にオチが予想できていたが、
実際に全編見た上でその予想を超えてくることは一度もなかった。
ある意味では「期待」していた通りのつまらなさだった。
まず根本的なこととして、この話を歯科技工という題材の中で描く必要があったのか。
明らか過ぎるほどに歯科技工という題材は添え物で、終始展開はイケメンや美人の恋愛モノのそれ。しかも古い。
これでは題材が刀鍛冶でも料理人でも、結局最後にはあのラストシーンに帰結するだろう。制作する意味あったのか?
歯という「人体の一つの部品であり」、「一生その人から離れない」というモノ、
それを日常的に使える喜びや失うことの恐ろしさに対して真摯に向き合ったのか、制作サイドには強く問いかけたい。
おくりびとのように歯一つに死生観まで持ち出してこいとは言わないが、
映画ひとつに多少なりとも命を削る真剣味というものが制作側にまったく感じられない。
ほかに何か光るものはなかったのかと思い返してみたが、脚本も演出も稚拙さばかりが目立ち、
うんざりするほどいいところがなかった。
気になったシーンの一つとして冒頭の親子喧嘩を挙げてみるが、
主人公の大地が父に「半人前」と見くびられ、自作の入れ歯を見せるが「やはり半人前」と批評されるシーンがある。
後半から種明かしすると、大地の入れ歯は実際に入れ歯を使用する人=顧客の潜在的な要望や習慣をつかみ切れていない
審美性のみを追求した無機質な入れ歯、独りよがりの作品だと父は評しているわけだが、
そういった答えを提示するなら、冒頭で大地の入れ歯に対して父親が
「これはどういう人のために作成した入れ歯だ?」と質問しなければフェアではない。
「見ただけで小奇麗なだけの入れ歯だったから半人前だと評したのだ」という反論はあたらない。
顧客の要望を重視するなら、まさに審美性のみを重視する人間だっていないということはないはずだし、
そういった想定を外して大地に対して何の予備情報を得ることなく上から批評の目を向けること自体、身勝手で不公平である。
結局のところ、そういう事情を一切無視して父親が大地の入れ歯を「半人前」と評したのは、
先にネタバラしをしてしまうと面白くないから、という、登場人物の感情に一切関係のない、ただただ脚本上の都合に過ぎないのだろうが、
とにかく練り方が足りないというか、この人物は何のために出てきたのか、この台詞は何のためにあるのか
いちいち意図が透けたり無意味だったりと終始気になってしまい、鑑賞どころではないのである。
脚本だけでなく演出もこんな調子で、「やっば!☆遅刻遅刻」から始まる
90年代のりぼんの漫画のコマ割りをそのまま実写に持ち込んだかのような絵面に正直失笑を通り越して恐れのようなものを抱いてしまった。
スタッフロールの最後にドヤ感満載で出てくる日本歯科医師会がこの映画にどういう形で
どこまで関わっているのか、正直もう知りたくもないが、この日本で「歯科」に関わる駄作が生まれてしまったということについて
ひたすら猛省していただきたい。
お、も、い、や、り☆の作品
新宿のシネマカリテで観てきました!駅近でとても便利な映画館です。
この作品はモナコ国際映画祭のグランプリを獲得したらしく(あまり報道されていない?!)、注目して観に行きました。混雑を避けて、平日の午前中を狙って行きましたが、時間帯のせいか、主演の高杉さんのファンと思われる方や女性が多かったです。
内容は、ハラハラドキドキ!、息をのむ展開!、といった感じではなく、全体的にほのぼのとしていました。シンプルなストーリーで、歯科技工士さんと歯科衛生士さんの活躍している日常を垣間見たような気がする等、勉強になりました。高杉さんや安田さんのように真剣に患者さんと向き合い、日々考えて下さっている医療現場の方には本当に頭が下がります。訪問診療もこれからの時代、ますます必要になると思いました。
助演男優賞を受賞された丹古母さんの演技もベテランらしく、いぶし銀の味があって良かったです。かぼちゃ、美味しそうに食べていました。また、エンドロール中に流れていた「ハンドサイン」というグループ(?)の歌も耳に残るほど、大変素晴らしかったです。
90分ほどの映画の中で取り扱っているテーマが多いものの、モナコ国際映画祭で高く評価されたとおり、退屈せず、良くまとまっていた印象を受けました。
高杉真宙ファン"だけ"専用。
高杉真宙が頑張っているので、ファンがチェックする分には意味のある作品。
新人の歯科衛生士としてデンタルクリニックで働き始めた真夏(安田聖愛)が出会ったのは、歯科技工士として医師たちから高い信頼を得ていた、幼なじみの大地(高杉)だった。歯科業界を舞台にした青春映画である。
作っているスタッフや俳優に責任はない。そつのない平均的なドラマと言えば、褒めすぎかもしれない。
制作・日本歯科医師会によるリクルート映画、ないしは自画自賛のマスターベーション作品。"8020運動"(80歳になっても20本以上自分の歯を保とうをスローガンにした運動)の30周年を記念して行われた事業の一環が、この映画である。
こういった社会団体が作ると、偉い人たちの顔色をうかがいながら企画を進めなければならないし、業界スポンサーの意見もどしどし反映される。監督はたいへん。
結果、尖ったテーマ性や芸術性は失われ、もちろん娯楽性さえも丸め込まれてしまう。当たり障りのない典型的なバランス作品になる。
もちろん、"全国で上映させたい"から、自費出版よろしく、無理やり所属会員にチケットを購入させる。選挙活動やどこかの宗教団体映画と同じやり口になるのがオチ。
全世代的に知名度があるゲスト俳優を脇役に固めるのもお約束。歯科医師役のキム兄(木村祐一)や、中山秀征、藤田朋子、阿部祐二・桃子親子、佐藤藍子、秋吉久美子、熊切あさ美、大平サブロー、丹古母鬼馬二など、妙に豪華なキャスティング。これらも歯医者さん繋がりか?
悪い映画ではない。特段、面白くもない映画というだけ。
(2019/2/16/ユナイテッドシネマ アクアシティお台場/シネスコ)
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