「ただのお祭り映画だと思ってた自分を殺せ」劇場版 ONE PIECE STAMPEDE てらゆうさんの映画レビュー(感想・評価)
ただのお祭り映画だと思ってた自分を殺せ
キャラ総出演のお祭り映画。
序盤は最悪の世代達が一気に現れ、どこかで聞いた原作通りの台詞を吐き、既視感に溢れた挙動や技を繰り出し盛り上げる。
ファンを喜ばせるための演出…まあこんなもんだろう…。そう思って大した期待値も持たず達観していた。
ところが…
「意外に面白いとこもあるじゃないか」
ただキャラクター頼りなのかと思いきや、所々「おっ」となる部分も多々見られる。
空島編以来となるノックアップストリームの登場や、アラバスタ以来となるクロコダイルとロビンの会話
挙げ句の果てには、宝の中身にラフテルのエターナルポース
原作を読んできたファンなら思わず興奮する要素が散りばめられていた。
そしてぽっと出のオリジナルキャラとは思えぬほどにバレットの魅力が高い。
劇場版ワンピースとしては珍しい「ただ最強を求める男」
ドン・クリークを彷彿とさせるシンプルな戦いの動機と、それを自称するだけの強さと格
何よりガシャガシャの実で巨大化した姿には、感心せざるを得なかった。
「まだこんな化物がいたのか…!?」
既に原作でビッグマムやカイドウといった化物を見ていた私にとって、スピンオフ映画ごときにそれ以上の化物が描けるわけがないと侮っていた。
事実、シキやゼファーも、化物と評するほどの絶望感は持ち合わせていなかった。
しかしバレットは違った。ただただ絶望。
押し寄せる興奮。ひたすらに踊る私の心。
バレットの過去が垣間見えるのも良い。
ロジャーに敗れ、ロジャーを越える最強の男を目指す。
バスターコールで捕まり、今度は自ら呼んだバスターコールを乗り越えることで最強を証明する。
これはバレットによる挫折克服物語なのである。
実に前向きで、ひた向きで、真面目な男。
名作とは、敵キャラにも魅力が溢れるものである。
そして最後には共闘。
幾人かのメンバーがピックアップされ、それぞれの見せ場が展開される。
ただ人気キャラを寄せ集めたのではなく、ストーリー上不自然のないメンバーが自然に結託したのも好印象だ。
言うまでもなく、ルフィが主人公として耐えず戦闘の中心を牽引していた演出も素晴らしい。
・過去最大級の絶望を与える大海賊
・海賊も海軍も革命軍も入り交じっての共闘
・その全ての中心に立つ主人公ルフィ
原作でもいずれ必ず来るであろう展開だが、私はそれを先に見せてもらったような感覚に陥った。
むしろ、これを超えられるような展開を、尾田っちが今後用意できるのか心配になるほどのものだった。
明確な動機のもと場を盛り上げる祭り屋フェスタ
定期的にネタ要員として和ませてくれるバギー
挿入歌で流れるmemories
細かな魅力はまだまだ尽きない。
ワンピースという作品の破壊力を改めて感じたとともに、映画単体としての完成度の高さに驚いた傑作であった。