「尾田っちがオールスターを書きたいとは思えない」劇場版 ONE PIECE STAMPEDE Samさんの映画レビュー(感想・評価)
尾田っちがオールスターを書きたいとは思えない
▪️今後の考察含む長文の感想になります▪️
映画が始まった初っ端から、原作でルフィ達と絡みのあったキャラが登場したり、パンダマンが潜んでいたり、これまでルフィ達が乗り越えてきた出来事がモチーフ、あるいはそのままに出てきたり、、、更には、敵味方での共闘やエースのビジョンなどと原作ファンからしたら嬉しくて堪らないシーンが多数。
しかしその反面、登場人物が多いだけにテンポが早く、バレットのバックグラウンドをゼファーのように深掘りできていなかったり、麦わらの一味の活躍部分のカットが少なかったりと、もっと丁寧に描いて欲しいところが多く見られた。当然感情移入する暇もなく、詰め込み感が半端ない。ストーリーや構成は正直これまでのワンピース映画の中で最も残念なものとなっている。
…と、ここまでの評価であれば、ストーリーを重要視する私にとっては星2.5なのだが、ふと、監修を務めた尾田っちが、あの描きたいものを描きオールスターなどどいうトレンドに流されにくそうな尾田っちが、本当に「ストーリーが残念な中身のないワンピース」を描きたかったのか?と思った。例え大塚隆史監督の意向であれど、監修の尾田っちが口を出さないわけがない。尾田っちがこの映画で描きたかったことは何か。そこに焦点を置いて思考を張り巡らせていく。
ワンピースの楽しみといえば、複数の伏線を元に様々なストーリー展開を経ての衝撃的な伏線回収ではあるが、その中に、同じようなことが度々繰り返されスケールがどんどん大きくなっていく、という法則のようなものがある。
例えば一つにルフィ達による王国救出というのがある。旧ドラム王国(現サクラ王国)ではワポルを、アラバスタ王国ではクロコダイルを、ドレスローザ王国ではドフラミンゴを倒し、悪の手からそれぞれの国を救出している。
この法則に着目してみると、今回の映画と同じようなことが過去に1度起きていることに気づく。それは、「頂上戦争」時における白ヒゲ海賊団、革命軍イワンコフ、クロコダイル、バギーらとの共闘だ。目的がエースの救出ではないものも中にはいたが、一応は一時的に共闘し海軍へ対抗していた。そして今回「海賊万博」における、他海賊、七武海、海軍、CP0との一時的な共闘。
ここからはあくまでも推測でしかないが、もしこの映画「ワンピース スタンピード」で尾田っちが描きたかったものはワンピースオールスターではなく、本当は第3、第4へと続く共闘への伏線なのだとしたら。次の共闘はいつか。
ヒントはきっとDではないだろうか。「頂上戦争」ではエース(D)の救出という目的が、「海賊万博」ではロジャー(D)の遺産という目的が。次なる共闘は、おそらくティーチ(D)を倒すという目的で行われるのでは。あるいは、今回ラフテルというキーワードが出てきたので、実際にラフテルに行くときか。
クロコダイルやバギーとの謎の共闘の縁も気になる。
…勝手な思い込みでもあるのかもしれないが、尾田っちはやはりこの単純な海賊オールスターという題材の中にも伏線を張っているのだろうと思うと、映画の見方も少し変わり、中身のある映画になる。そんなワンピースの素敵な魅力の後押しもあり、星3.5という評価にさせていただきました。
長文失礼致しました。