「色彩とアクションの洪水は観る人を選ぶかも知れないが、素晴らしい熱量(文字通り)に感服。」プロメア yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
色彩とアクションの洪水は観る人を選ぶかも知れないが、素晴らしい熱量(文字通り)に感服。
見逃して後悔していたところ、運良く再上映があったので、ようやく鑑賞できました。
今石洋之監督作品は初見だったので、冒頭から溢れる色彩、座席の激しい揺れ(4DX2Dにて鑑賞)に、最後まで見通すことができるんだろうか…、と不安になっていました。ところが初めて見る今石作品と妙に感覚が合ったのか、途中からはこれらの要素が全く気にならなくなったどころか、楽しむ余裕まで出ました(内容上、霧状の水を被ることが多かったけど、こちらは慣れなかった…)。
登場人物名や技の名前がその都度凝った文字デザインで登場するあたり、非常に見栄や外連味を重視している作品なんだろうな、と思っていましたが、主人公のガロが正にそういった要素を体現している人物でした。
世界設定に仕込まれた謎が急速に膨らんでいって、あれよあれよという間にクライマックスにもつれ込んでいきます。ガロは直情的で、あまり深く考えずに問題に切り込んでいきますが、これはほとんどの観客の心境と同じでしょう。非常に情報量の多い画面を見ながら、複雑な物語を理解するのは至難の業です。解釈は後回しで、画面の動きに意識を集中せざるを得ません。
賛否両論が激しく分かれている本作ですが、確かにそれも納得です。画面のキャラクターの動きと同様、観客の意識が付いてくるのを辛抱強く待つような作品とは思えず、付いてこれた人は大絶賛するでしょうが、そうでない人は色彩や動きの乱雑さ、物語の無理筋な部分が目について、批判的になってしまうでしょう。
新海誠監督の『天気の子』は構図といい質感と言い、スーパーリアリズムの表現をアニメで追求しているように思えますが、本作は2Dと3Dの融合表現を極限まで追求したアニメ技術の、一つの到達点ではないかと感じました。その点で比較すべきは日本のアニメというよりも、『スパイダーマン:スパイダーバース』のような作品ではないかと思います。恐らく『スパイダーバース』と比較して資金面で潤沢とは言えないであろう状況下で、これだけの作品ができたことは驚異的なことでしょう。
作品を存分に楽しみつつも、日本で本作のようなアニメ作品がもっと製作できるような環境が整って欲しいと思わずにはいられませんでした。