劇場公開日 2019年5月24日

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「現代社会への痛烈な風刺を火種に燃え上がるトコトン熱い力作」プロメア よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0現代社会への痛烈な風刺を火種に燃え上がるトコトン熱い力作

2019年10月16日
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鑑賞方法:映画館

普通の人が突然自然発火を起こして炎を操る特殊能力を持ち火災を起こす事件が発生、同様の事件が世界中で発生した結果世界の半分が焼失してしまう。彼らはバーニッシュと呼ばれ隔離されるが逃げ延びた彼らの一部はマッドバーニッシュと名乗って各地で火災テロを起こすようになっていた。マッドバーニッシュに対抗するために組織された高機動救命消防隊バーニングレスキューは日夜消火救命活動に当たっているが、そこにやけに態度がでかくて自信満々な新人隊員ガロが配属される。

ド素人の主人公がいきなり大活躍という定番のツカミはトム・クルーズの『デイズ・オブ・サンダー』を例に挙げずともド真ん中の定番。その特殊能力ゆえに迫害されるバーニッシュはX-MENのミュータントでも象徴されていた虐げられし人々。己の欲望のままに破壊を尽くす者はごく一部、その殆どは突然与えられた能力に戸惑い迫害に怯えながらもただ慎ましく生きる人間。そしてそんな彼らを理解し共に生きることを選択する普通の人々もいる。しかしそんな共生を良しとしない権力者は脅威を煽り対立を鼓舞する。その構図はスクリーンの外に広がる現実そのもの。

火消しのくせにとにかく熱い男ガロ。彼とは対照的に冷静沈着なマッドバーニッシュのリーダー、リオ。この二人が繰り広げる攻防の果てに浮かび上がる野望がその牙を露わにした時この作品がアニメ史にくっきりと焼印を残す傑作であると確信しました。

松山ケンイチ、早乙女太一、堺雅人というキャストに大丈夫か?と懸念を持ってましたがこれは完全に見当違いでキャラクターを立体的にしてみせた熱演は見事でした。

完全オリジナルの劇場作品は日頃から真面目にアニメを追っていない私のような人間には敷居が高いわけですが、信頼出来る人が鑑賞リピートしまくっていることを知り重い腰を上げてみましたが正解でした。滅びゆく我が祖国もまだ捨てたものではない、その確信は映画のテーマとも通底していて心の底から感動しました。傑作です。

よね