「万人ウケしない人間の生々しさ」エリカ38 mmkyさんの映画レビュー(感想・評価)
万人ウケしない人間の生々しさ
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映画を、綺麗なもの、驚きや感動を与えてくれるもの、という視点でとらえている方にはオススメしません。
監督は、人間の生々しさを表現したかったんだろうと思いました。
俳優に寄りすぎと思われるカットや、暗めの照明など表現方法が独特でした。
それは万人ウケしないと思い、好き嫌いも分かれるものだと思いましたので、安易に人にオススメできないと思いました。
「樹木希林の遺作&初プロデュース」に釣られて、普段からドキュメンタリーやメジャースタジオ以外の映画を観ない方が観てもピンとこないだろうと思いました。
印象深いシーンは、
豪邸の隅の母の部屋と思われる縁側で、ホームセンターで売っているような胡散臭い洋風のガーデン椅子に座りながらタバコ片手に呟く。
「おかあさん、一緒に死のっか」
母は縁側の窓のそばのベッドに腰掛けで、不釣り合いな華美な服装、装飾品を付けた姿で爪に真っ赤なマニキュアを塗りながら答える。
「あたしはいいわよ」
ちょっと薄暗いことに手を染めてお金が手に入り、人生が上向いてきているという幻想の只中で、こんなはずじゃなかった、何がきっかけでこうなってしまったのかと、一人の人間として人生を振り返ることは大なり小なり誰にでもあることだと思います。
どうしても居心地の良い、谷の方に落ちていってしまう。
主人公がそんな「人間のどうしようもない性質」を表現し、樹木希林さん演じる母は、それを責めるでもなく、時には力も貸し、離れたところから見つめ続けるという役に徹していたことが心に残っています。
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