「「赤トンボ」ではなくて「赤い風船」」エリカ38 もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
「赤トンボ」ではなくて「赤い風船」
あの“美代”ちゃんが本物の女優になった(ラストでは実年齢丸出しのアップまで晒して)ことに先ずは感銘を受けた。劇中で聡子(エリカ)が歌う「赤トンボ」が「赤い風船」に思えて仕方がなかった。しかも樹木希林とデュエットまでして!(しかしこれは『時間ですよ!』をリアルタイムで観ていた者の感傷でしょうね。)映画としても抑制の効いた静謐な演出の佳作だと思う。最後には誰人の心にもいくら小さくてもある金銭欲を仄かに暴き出しているし。誰の中にも聡子的部分はあるのだ。やるかやらないかの違いだけで…『紙の月』も同じ実話に基づいているのだろうか。どちらのヒロインも最後にタイに逃げるのが面白い。私は『紙の月』のヒロインはお金が欲しかったのではなく、お金で買えるものが欲しかったのだと解釈しているが、聡子(エリカ)は最初はやはり金自体が欲しかったのだとは思う(恐らくヒロインの生い立ちが違いを生んだのだろう)。聡子(エリカ)が最後まで(少なくとも表面的には)良心の呵責も罪悪感も見せないところがいっそ潔くて良かった。『紙の月』のヒロイン同様金で男を買ったが、(本心からかどうかはともかく)男に手紙を書かせただけ幸せと言うべきか。久しぶりに木内みどりを見れたのも嬉しかった。
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