劇場公開日 2019年1月12日

「感受性が豊かな人が変わった子と言われる」マチルド、翼を広げ abukumさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5感受性が豊かな人が変わった子と言われる

2019年2月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

知的

 母は精神的に尋常でない人だけれど、ある面から見ればとてもおもしろい人。父も精神的に弱い面があるけれど、優しい男性です。
 マチルドはこの両親を彼女なりに愛していて、9歳なのに孤独に置かれひどく困らされても恨んだり怒ったりするのをぐっと我慢している。

 そんな健気な少女だけど、彼女も母親の異常なほどの感受性の鋭さを受け継いでいて、しかも異常にはならないところがすごくいい。
 母親のせいで恥ずかしいことが多いけれど、自分の感性と相通じるものがあり、母親と共に生きようというその心意気。彼女の社会的自我の分身がフクロウとの会話で語られているのもオシャレ。押付けがましいところがなく、気持ちのいい映画です。

 子役リュス・ロドリゲスの性格も役に影響している。監督が選んだ理由もよくわかります。自分の過去を投影するだけでなく子役に惚れ込んだ。負けん気が強そうでユーモアもある性格が、走ったり、鳥と見つめあったり地面を掘ったりするときの身體の使い方に現れていて、演技ではなく、子供の素晴らしい精神と存在感を感じさせます。
 フランスで人骨を標本に使うのは、本当のことなの?これを死者への冒涜と感じて、物置から盗んで山に埋めに行くマチルドの感受性こそ正しい。
 短いけれど大人になったマチルドをアナイス・ドゥムースティエが演じているのも納得。配役も監督の勝利です。

abukum