劇場公開日 2019年8月24日

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「100年以上前のパリを舞台に痛烈な現代風刺を突きつける煌びやかなファンタジー」ディリリとパリの時間旅行 よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0100年以上前のパリを舞台に痛烈な現代風刺を突きつける煌びやかなファンタジー

2019年10月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

舞台は19世紀末のパリ。ニューカレドニアから密航してパリにやって来た少女ディリリはパリ博覧会出演中に知り合った配達人のイケメン、オレルとパリ散策に出かける。ベル・エポックに沸く街はどこまでも眩しく煌びやかだが一歩路地に入るとそこには絶望的な貧困が横たわっている。そんな街を駆け抜けるのは相次ぐ少女誘拐事件の話題。男性支配団という名の犯罪組織による犯行らしいということ以外ロクな手掛かりもない中、ディリリは少女達を助けるという使命に目覚めオレルの知り合いに聞き込み調査を開始。ただの雑談から少しずつパリの地下に潜む巨大な闇が浮き彫りになっていく。

ディリリと行動を共にするオレルは配達人なのでメチャクチャ顔が広くて、彼の知り合いがキュリー夫人、プルースト、パスツール、ピカソ、モネ等超豪華。そんな友達の輪はミュシャのポスターが溢れる夜のパリでサラ・ベルナールやフェルディナント・フォン・ツェッペリン、サントス・デュモンにまでどんどん広がっていく。この辺りを切り取るだけでもキラキラしたファンタジーが成立するくらいの煌びやかさ。そんな眩しさがあってこそ男性支配団が目論む陰謀がシレッと映し出されるワンカットの凄惨さがドンと胸に突き刺さる。その後展開される当時のセレブ達の知恵と財力を結集した救出作戦がこれもまたとんでもなく豪華で爽快。この作品がとにかく凄いのは100年以上前の時代を舞台にしながら今まさに我々が生きる現代を痛烈に風刺していること。人種差別、男女格差、貧困、我々人類は100年程度では1ミリも進化しない、それを映像としてテーマとして叩きつけながらあくまで爽やかに映画は幕を閉じますが、我々観客の胸に残るのはもっとずっと苦い何か。国産とは一味も二味も違う実に独創的な作品です。

キラ星のようなセレブがひしめく中でひときわ個性的なのはオペラ歌手エマ・カルヴェのお抱え運転手ルブフ。彼の複雑なキャラクターは物語の中でも際立っていて、何者でもない彼が物語をゴロッと転がす様は圧巻です。フランク・ダラボン監督の『ミスト』でいうところのスーパーの副店長オリーみたいな存在でした。

よね