劇場公開日 2019年5月17日

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「なんと胸打たれる青春群像劇だろうか」僕たちは希望という名の列車に乗った といぼさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5なんと胸打たれる青春群像劇だろうか

2020年10月11日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

TSUTAYAのレンタル棚に陳列されていたのを見て、全く内容知らないで借りた映画です。

結論ですが、めちゃくちゃ面白かったし、胸を打たれました。日本にも「子供が大人の束縛から抜け出すため、自由のために闘争(逃走)する」というストーリーの映画やドラマは多くありますが、「1956年の西ベルリンと東ドイツ」という舞台がその闘争をより深刻で過激なものにしている印象です。しかも、この物語が「実話を元にしている」ということも衝撃的でした。

最低限、冷戦についての知識は持っていたほうがいいかもしれませんね。東ドイツと西ベルリンの関係は言わずもがな、劇中で重要なキーとなるハンガリー動乱とか、作中に頻出する「ファシスト」という言葉とか。ある程度知っていれば引っかからずに観れますけど、知らないと「何それ?」と頭の中で引っかかってしまってストーリーに置いていかれますので。

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1956年、ベルリンの壁が建設される少し前の物語。アメリカを盟主とする資本主義国の西ベルリンとソ連を盟主とする共産主義国の東ドイツは対立状態にあった。東ドイツの高校の進学クラスに通う学生であるテオ(レオナルド・シェイヒャー)とクルト(トム・グラメンツ)は西ベルリンの映画館に忍び込み、そこでハンガリーの民衆蜂起を伝えるニュースを目にした。ハンガリーの若者たちの行動に胸を打たれた二人はクラスメイト達にハンガリーのために黙祷を捧げることを提案し、多数決により黙祷は行なわれた。しかしこの黙祷が「反革命」と見做されてしまい、人民教育相から首謀者を明らかにしなければ進学クラスを閉鎖するとの警告を受けてしまった。仲間を密告してエリートとなるか、信念を貫いて大学進学を諦めるか。彼らは選択を迫られることとなった…。
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共産主義の圧迫感というか束縛や思想弾圧についてかなり否定的な描かれ方をしているな~という印象。「当時の思想弾圧はここまで酷いものだったのか」という恐怖みたいなものを感じました。

この映画の素晴らしいところは、登場人物それぞれの考え方や感情の動きを実に丁寧に描いているところです。
「何とか言い訳をして罪を免れよう」とするテオに対して「自分がやったことなのだから責任を取ろう」とするクルト。言い訳がましい彼氏のテオに呆れてしまい逆にクルトに惹かれるレナ。自分は黙祷に反対していたのに、何故か首謀者と疑われてしまったエリック。そして彼らの家族たちの立場と考え方。
それぞれの登場人物がきちんと考えきちんと行動することで、「生きている人間のリアルな葛藤」というのが見えてくるのです。それぞれの登場人物に感情移入し、時に彼らと共に喜び悲しむことができるのです。

「1956年の東ドイツと西ベルリン」という絶妙な舞台設定によって、「この後彼らがどうなったのか」が何となく察することができるところも本当に素晴らしかった。設定を100%活かした物語だったと思います。

是非この作品を家で観るときは、途中退席せずに、トイレ休憩とか挟まないで、なるべく一気に観た方がいい。本当に面白い作品でした。オススメです!!

といぼ:レビューが長い人