劇場公開日 2019年4月5日

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「白石監督の駄作打ち」麻雀放浪記2020 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

1.5白石監督の駄作打ち

2019年9月11日
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鑑賞方法:DVD/BD

単純

寝られる

『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』『彼女がその名を知らない鳥たち』『孤狼の血』『止められるか、俺たちを』…。
白石和彌監督は、今日本映画で最も好きな監督だ。
新作が発表されると必ずリストアップするほど気になり、実際見たらその年のMY BESTに選出する事もしばしば。
今年も『ひとよ』が非常に見たい!

…アレ? これって、いつぞやメチャ好きだったある監督に似ている。
園子温。
園子温の作品も見たらその年のMY BESTにしばしば選出したり、新作も必ず要チェックしていた。
が、売れっ子になって作品を乱打するようになってから、作品の質が落ち、次第に関心が…。

白石監督も今、年に2~3本ペースの売れっ子ぶり。
思えば、昨年の『サニー/32』が黄色信号だったのかもしれない。
そして、白石監督の今後のキャリアを心配させるような本作…。

白石監督があの『麻雀放浪記』を再映画化する!
当初はワクワク!
自分は麻雀についてはルールも知らなければ全く興味も無いが、その昔見た1984年のオリジナル版は非常に面白かった事を記憶している。
スリリングで、渋く、冷徹ですらあるハードボイルドな麻雀の世界とそれで食っていく者たちの闘い。
白石監督の『凶悪』『孤狼の血』の手腕を以てすれば、名作であるオリジナルにも負けない勝負に期待出来そう。
…が! 続報を聞いてびっくり仰天。

終戦間もない麻雀の世界で生きる若者・哲が、2020年の東京にタイムスリップし…。

…ハァ!?

アレ? オリジナルってそんな話…?
…いやいや! オリジナルは大分昔に見て詳細はほとんど忘れてしまっているが、そんな話じゃなかった事ははっきり断言出来る。
徐々に濃厚になっていく不安要素。
それは、出演者のトラブルやいざ公開されてからの酷評でさらに拍車。
で、実際に見てみたら…、
嗚呼、これはもう…。

まず、何故にタイムスリップ? SF要素?
オリジナルのままの設定じゃダメなの…?
そのカルチャー・ギャップが笑いを生むが、あの徹底したハードボイルドの世界がコメディ調に…。
セグウェイに乗って移動する東京五輪組織委員会のヘンな奴ら、麻雀メイドにフリフリコスプレ…。
不必要なエロやナンセンスな設定に笑い…。
果ては麻雀AIロボットまで!

何じゃこりゃ!?

少なからずハイテクや管理社会を皮肉ってもいる。
来る東京五輪後を想像させるような荒廃や貧困…。
でもそれらも、チープな近未来映画の劣化版。
極め付けは、麻雀に興味無い自分が言うのも何だが、麻雀の本気度や熱を全く感じられない。
一応所々麻雀シーンを挟み、クライマックスは最大見せ場の麻雀勝負が設けられているが…
スリリングな麻雀勝負というより、大袈裟な演出や音響でごまかしたゲーム感覚のペテン試合…。

主演・斎藤工の念願の企画だったらしいが、こんなのを望んでいたのか…?
本当は、『凶悪』や『孤狼の血』のようなタッチでの『麻雀放浪記』にしたかったに違いない。
別に白石監督一人だけが悪いんじゃなく、こんな話を書いた脚本家、こんな設定にOKを出したプロデューサー、そもそも企画を通した製作会社に問題あり。
キャストのバカげた珍演も言わずもがな。
“ベッキーママ”は百歩譲っても、“ベッキーロボ”は何なの、アレ!?
お蔵入りの危機にまでさせた某キャストのトラブルについては…、好きな役者だっただけに、心底反省して下さい!

これは、ふざけて作ったのか? だとしたら、オリジナルを侮辱している。
真面目に作ったのか? だとしたら、あまりにも残念過ぎる。
見てるこっちの方がポスターの斎藤工のようにパンクしてしまいそうな、トンデモ駄作!

白石監督は第2の園子温になってしまうのか…?
いや、まだまだ、『ひとよ』や意欲的な新作に期待したい。

近大