「好き、生きる、死ぬ、祈る、そして…」タロウのバカ ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
好き、生きる、死ぬ、祈る、そして…
好きって何?
映画の中でずっと投げかけられる問いだ。
好きとは何か?
べつに学校で習った訳でもないし、いつのまにか女の子が好きとか、友達が好きとか自然と湧き上がってくる感情のようで深く考えたことなどなかった。
好きとは何か?
それほど様々なものを削ぎ落とさないと分からないことなのだろうか。
タロウは、母親の愛情など注がれたことはないし、学校も行っていない。
半ば感情を剥き出しにして生きるタロウにとって、好きとは大きなテーマだった。
そして、それはエージやスギオにとっても、更に、洋子にとっても同様だ。
スギオは洋子に対して、好きという感情を抱くが、それは洋子に受け止めてはもらえない。
洋子には好きという感情が欠けてしまっていた。
スギオは、好きという感情を心のうちに抱えて命を絶つ。
エージは、好きということが何か、はっきりしないで、分からぬまま死んでゆく。
そして、タロウは…、きっと、大切な友人を失って初めて、この2人のことが好きだったのだと気付き、狂ったような叫びで、その悲しさを表したのではないか。
好きとは、楽しいと何気なく通り過ぎていく。
好きとは、叶わなければ生きる希望を失うこともあり、
好きな人がいなくなれば悲しい。
好きとは、人が人であるための感情のもとであり、
好きとは、生きるのに大切なものであり、
好きな人のためには何か祈ろうとさえ思う。
タロウが仲良くしていたダウン症の子が、友人を亡くして、雨の中悲しみに暮れて歌っていたのも、実は象徴的な場面だったのではないかと思う。
ティーチインの舞台挨拶のある上映会で鑑賞し、監督に、好きって何ですか?
分からないと。
僕たちへの問いかけですか?
そう、世の中の人みんなへのね。
誰かを好きになりたいと思わせる。
僕は好きな映画だった。