「【”君はポンコツではない!立派なヒーローだ!” 発達障害の息子が、一度は自分を見捨てた父親のために行った尊い事。不愛想だが、息子を想う父の姿も素敵な、親子の関係性修復の物語でもある。】」靴ひも NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”君はポンコツではない!立派なヒーローだ!” 発達障害の息子が、一度は自分を見捨てた父親のために行った尊い事。不愛想だが、息子を想う父の姿も素敵な、親子の関係性修復の物語でもある。】
■今作の魅力
・36年前、発達障害を持って生まれたガディ(ネポ・キムヒ)と関係が良くなかった妻を捨てたルーベン(ドヴ・グリックマン)は、妻の事故死により、急遽ガディを”一時的に”自宅のある車整備工場に引き取ることになる。
ー ルーベンが戸惑う姿。それは、そうだろう・・。
ガディはイロイロと拘り(一時になったら、昼食。食事は御飯とオカズがキチンと分けられていないとダメ・・etc.)があり、厄介でもあるし・・。ー
・が、30数年ぶりに一緒に暮らし始めると、徐々に打ち解けてくるルーベンと息子ガディの姿が良い。一度は、施設に入れたが、施設の対応と苛められたガディからの電話を受け、自宅に連れ戻すルーベン。
そして、ガディを優しく気遣い、見守る、整備工場の従業員デデや、近くの食堂で働くデデの恋人アデラ(ガディのお気に入りでもある)。そして食堂を営む、不妊に悩む親族のリタ達の姿が自然で素敵である。
ー 彼らは、ガディを偏見の眼で一切見ない・・。けれど、ルーベンとの関係性を少し心配もしている・・。その微妙な塩梅が良いのである・・。-
・ガディを担当するソーシャルワーカー、イラナの姿も良い。ガディを心配しつつ、ルーベンの一見不愛想だが、心根が優しい所に惹かれていく・・。ソーシャルワーカーとしての立場も貫きつつ、二人を気遣う姿。
・ルーベン自身、身体の変調に気付いているが、ガディの面倒を見るために周囲には告げず、こっそりと医者に通う姿。
イラナから勧められた特別給付金受給のため、ルーベンとガディは行政官の面接を受けるが、ルーベンと別れるのが嫌なガディは”靴ひもを結べないフリ”をする。
・ルーベンの症状は急速に悪化し、末期の腎不全で”直ぐにでも腎臓を提供してくれるドナーが必要”だと、医者に告げられて・・。
だが、ルーベンは愚かしき拝金主義の弟、リタ(血液型が合わなかった・・)に、ドナーを依頼するが・・。ガディからの申し出は拒む。
- 被後見人は、後見人のドナーにはなれない・・。それは、ドナーは”心身ともに健康であることが必要だから・・”と言う行政判断。
友達である父ルーベンを助けるために、”心身ともに健康であることを証明するために、懸命に”靴ひもを結ぼうとする”ガディの姿。
けれど・・。
ガディは、ドナーになるには不適合と言う苦渋の判断をしたソーシャルワーカー、イラナ達に、懸命に訴えるガディの言葉が心に響く・・。”サポートが必要なんだ・・!”ー
<父であり、友だちでもある、ルーベンの命を救おうと、懸命に頑張ったガディ。
そして、一度は逃げ出した施設に戻り、音楽の好きな女の子と再会し、
”靴ひもを自分でキチンと締めて”
立ち上がり、二人で手を繋いで歩いて行く姿・・。
君は、ルーベンがいなくても、もう大丈夫だ。
何故なら、ユーモアがあり、心優しく、いつもニコニコ笑っている君は、皆のヒーローだから・・。>
<2020年12月6日 刈谷日劇にて鑑賞>