「最高の政治家とは、国民にとって最高のセールスマンなんじゃ。」LORO 欲望のイタリア bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
最高の政治家とは、国民にとって最高のセールスマンなんじゃ。
いや、気のせいじゃ無く、最近あまりイタリア映画を見てない。
LOROの意味は、ここでは「They」だと解釈。つまりは、悪名高きベルルスコーニと、その周辺の人々を風刺的に描いた社会派ドラマな訳で。セックシーだけど不思議と全然エロくない美女達の扇情的なダンスを強調する予告に、騙された!って思うくらいに、途中の「人間ドラマ」はイタリア的です。
女とクスリを武器に、野心を持ってベルルスコーニに取り入る事を画策するセルジョ・モッラ。彼の策略の描写が「エロくないセクシー」パート。あ。エロくないと感じるのは、あくまでも俺の感性であって、見る人によってはエロエロかも知れませんから。オパーイをドヤ顔で晒されても、俺、全然嬉しくないんで。ちょっと脱線しましたが、ド派手なセクシーパートを過ぎると、妻ベロニカの愛を取り戻したいベルルスコーニのパートに入ります。このパートから、政治家としての原点であるセールスマンとしての自分自身の才覚に翳りが無い事を確認しようとするパートなどは、映画として見どころあります。ソレンティーノの本領発揮です。トニ・セルビッロの演技に圧倒されます。
最高のセールスマンの能力を最大限に発揮し、左翼陣営から6人を寝返りさせたベルルスコーニは議会での優位を逆転させ、首相の座に返り咲きます。まぁ、このくだりはグッダグダのエロおやじ振り全開。下衆下衆下衆っぷりを十分に描き切ってます。
情に脆い一面もあったと言われるベルルスコーニの姿も描かれてたりします。政治家としての才覚はさておき、思い切った大胆な施策を断行する度胸はあったベルルスコーニへの一定のリスペクトも感じられるとこは、実は、結構好き。
ラストは、地震(時期的にはラクイラ地震?)で半壊した教会からイエス像を救出した後、地面に疲弊した表情で座り込む消防隊員(?)の姿を、無言で映し出して終わります。良い事も悪いことも、たくさんあったベルルスコーニによる4次に亘る政権により国民は疲弊しきっている、って事なんかなぁ。なんて思いながら。
思った以上に良かった。
ちなみに、ベルルスコーニとACミランについて蛇足ながら補足。1986年にクラブを買収して会長の座についたベルルスコーニは、豊富な資金力で2チーム分の戦力を揃え、タイトなスケジュールを戦力ダウンせずに戦う「ターンオーバー制」を導入。同時に、伝説となったオランダトリオを補強し、翌'87-'88シーズンで、当時世界一のリーグと言われていたSERIE-Aを、僅か2敗で制します。セリエA3連覇、UEFAチャンピオンズリーグ5度の優勝は、ベルルスコーニの手腕によるところもあると言わざるを得ません。尚、彼は2017年4月に、ACミランを中国企業のコンソーシアムに売却しています。