劇場公開日 2020年1月3日

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「確実にランクの違う演出力」虐待の証明 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0確実にランクの違う演出力

2020年7月11日
PCから投稿

母親からの虐待とそのトラウマから自棄的に生きる女性が、虐待を受けて傷だらけの近所の子供を助けようとする。実話に基づいているらしいが、そうは思えないほどドラマチックに展開する。底辺に生きる者たちの息吹がリアルで、すんなり共感した。役者が巧いことに加えて着衣や皮膚や表情や傷跡にリアリスティックな現実味がある。しめやかな単楽器音楽も合っていた。

韓国が、何かにかこつけて日本と比較をしてくることを快く思わない。しかし韓国映画を見ると、日本映画と比較している自分に気づくことがある。
この映画も題材がわが国の時事にも通じることゆえ日本映画だったらどうなるかを想像した。

日本映画には境遇の誇示が見えることがある。かわいそうな人が、かわいそうの「どや」を見せる感じがある。映画そのものにも問題提起の誇示が見えることがある。「この映画ってすごく啓発してるよね」の「どや」が見えるばあいがある。
これは善人にも悪人にも、弱者にも強者にもありえる。
顕示欲とも言えるし、クリエイターの主観でもあり、観衆または映画賞への媚びとも言える。
総ての日本映画にあるわけではないので、一概ではないが、韓国映画には映画や役者から感じる「どや」がない。映画に承認欲求がなく、役者がすんなりと役に染まる。だから見やすい。

本編のように重さのある題材ではとくに見やすい。主人公は弱者面をしていない。加害者はいかにもな悪をまとっていない。監督は問題提起をしていない。うまく言い得ているか解らないが、監督/俳優から生じるひけらかしを韓国映画では感じたことがない。

因みにこの映画でミスペクに寄り添う男性は見たことのないキャラクターだった。面倒くさがっている態様なのに、思い遣っている。何より性を介していないのがいい。

初見の女流監督だが古豪のごとく映画を知っていると思う。お隣のほうが長じていることがまたも解った。

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津次郎