「死にはエネルギーがある」母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。 M hobbyさんの映画レビュー(感想・評価)
死にはエネルギーがある
久しぶりに映画鑑賞したら、賠償さんと安田顕さんの演技に泣かされた。
死のイメージって、悲しい、寂しい、空虚感など、ひたすらネガティブなものしか無かったけれど、映画の中でサトシが未だ見ぬ我が子への手紙に、死にはエネルギーがあると書いたのを見て、新しい!!と感じた。
本作は、宮川サトシさん御本人の実話を原作に作られているが、大好きな母親がある日癌になり、その闘病生活〜亡くなる瞬間までをしっかりと描く。
サトシさんは二人兄弟の下。甘えん坊で泣き虫で、お調子者。The末っ子なサトシくんが私には可愛く思えた。
賠償さん演じる母、明子はそんな末っ子サトシを心から愛し、死ぬまでも、死んでからもその愛はサトシだけでなく、夫、兄、サトシの妻、みんなへと注がれていることがよく分かる。
大好きなお母さんが病気になる、治らない、死を受け入れる準備をする、死んでしまう。どのステージにもその都度心の葛藤が描かれ、その度にギュッと心がつかまれる。
泣き虫なサトシの泣き顔が、情けないんだけど、そりゃそうよね、お母さんが死んじゃうかもしれないんだもんねってものすごく共感。
ただ、この映画、サトシのお調子者具合いもちょいちょいあって。シリアスな場面でもお笑い要素が。がん細胞が脳に転移したのも、「移転」って言っちゃうし。妻をなくした夫(石橋蓮司)が寂しさのあまり、酒浸りになって庭で肉を持って寝転ぶし(案の定、庭は荒れ放題)、父と末っ子がよく似てて泣き虫だし、兄貴がお母さんに似てドンとしてるかと思いきや、やっぱりこちらも父さん似だとか(笑)
タイトルは、君の膵臓をたべたいのパクリみたいだけど、まぁ、そこは敢えておいておいて。亡くなって形はそこに無いとしても、その人からもらった愛情、命、絆などなど、大切なものは自分が生きているだけでこの世にあるんだってこと。
登場人物の女性陣が凛としてるからか、余計に男性の弱さが引き立つ。
そんなところも私はこの作品の好きなところ。