「美しいものは大抵真実ではない」三人の夫 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
美しいものは大抵真実ではない
香港映画というと、やはりジャッキーチェンを筆頭としたカンフー映画と思うのはかなり時代錯誤なのだろう。しかしその映像的テンポの良さは脈々と受け継がれているのが懐かしく感じる。
今作品、日本で言うと上野オークラ劇場でかかるような作品を、もっと制作費を掛けて撮られたというイメージである。濡れ場があれば後は制作陣の理念を存分に発揮して良いという鉄の掟の基、作られる作品として、懐かしいATGの匂いを漂わせてのテイストとの共通項を強く感じる作品である。その真髄は『逞しさ』。これはもう日本では化石化している概念が、相変わらず中国ではイズムとして持っている力強さを堂々と表現した内容であった。
特に主演のクロエ・マーヤンの文字通りの体当たり演技は、ストーリーの求心力を一手に引き受けての力強さを十二分に感じられた。以前レビューを書いたオークラ作品の豊満な女優が中々いない中でやっと見付けたAV女優の件をアップしたが、この女優は当たり前の様に遙か上位のレベルでの演技力でグイグイと観客をのめりこませる。
ストーリーそのものはドラマティックさとしての抑揚よりも、置かれている状況の足掻きを淡々と流すことに始終しているのだが、その虚無感も含めて、考えさせられるものがある。セックス依存症としての病状ではなく、ファンタジーに近いエロ漫画的要素を押し出しながら、倫理観を超えて行かざるを得ない現代社会の現実をこれでもかと表現していることに、痛々しさを十二分に感じ取れる。
要所要所に、ブラックジョークを織り交ぜるのもオークラ映画的なので、自分的には概視感は否めないが、観たことがない人が観れば新鮮なのだろう。
かなりの部分で、今作のエネルギッシュなバイタリティを叩き付けるパワーを感じさせる映画はあまりないと思うのだが、そのしぶとさに改めて敬意を表したい、そんな作品である。