「リズミカルな編集が心地よい」ホットギミック ガールミーツボーイ 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
リズミカルな編集が心地よい
S・ギンズブルグが『動画映画論』で「モンタージュによるリズミカルな構成は、疑いもなく映画を音楽に近づける」と書いている。映像の編集は、場所の連続性とか視点の整合性とかいろいろな要素を考える必要があるだ、リズム感もとても重要だ。
本作は編集のリズム感が抜群に良い。映画全体が音楽的な一定のリズムを持って小気味よく進んでいく。山戸結希監督はこれまでの作品でも音楽的な映像つくりを志向していたと思う。『5つ数えれば君の夢』や『あの娘が海辺で踊ってる』も非常に独特のリズム感を持っていたし、ナレーションをまるで音楽を聞かせるように使う。役者も、背景も、小道具に至るまで、楽器を奏でるように彼女は映像を組みたてているんじゃないか。駅のホームで言い合う男女2人のシーンで、抜群のタイミングでやってくる電車、抜群のタイミングで開閉するドア。マンションの非常階段を乗降するリズミカルな音。動作音にすらメロディあるように聞こえてくるから不思議だ。
ロケ地を工事中の場所が多かった豊洲あたりを選んだのも良いセンスだ。工事現場は刻一刻と風景が変わる。青春時代も若い時の一瞬にしか存在しない、日々刻々と変わるその景色が青春の儚さと重なり合っていた。
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