「南北戦争から約100年…それでもまだ色濃く残る黒人差別」グリーンブック 伶人さんの映画レビュー(感想・評価)
南北戦争から約100年…それでもまだ色濃く残る黒人差別
時代背景は1960年代のアメリカ。
黒人のジャズピアニスト(クラシックジャズ)であるドン•シャーリーと、南部アメリカ遠征に行くために雇ったイタリア系白人であるトニー•バレロンガの2人が、差別と向き合い友情を得る物語。
南北戦争から100年経ってもなお、南部アメリカには白人による黒人差別が色濃く残っており、演奏会のため遠征を続ける中で多くの差別を目の当たりにする。
なぜ、わざわざ差別が色濃く残る南部へ演奏に行くのか?そこにこの映画の見どころが詰まっている気がする。
また差別というのは単に有色人種であるという事のみでなく、格差も含めてみると面白い。そういう意味ではイタリア系白人のトニーもそこに含めて考える事が出来るからだ。
これを見た私が思うに、差別とは個人の心のありようを映していると思う。何故ならば、差別は人の心の中で生み出されるものであるからだ。
綺麗事ではなく差別と真正面から向き合うには個人個人の一歩踏み出す勇気が必要であり、過去の歴史からも、痛み無くして成果を上げることはできない。差別を無くすという事は歴史を変えるという事であり、差別なき世界を作るには大きな代償が必要なのかもしれない。
そして何よりも友情に代えられるものは何もないという事である。
ところで、日本の大相撲において、ある年の春巡業で市長が倒れ、とっさに救命措置をした女性に対して「土俵から下りてください」。行司が場内アナウンスを繰り返して議論を呼んだあの一件を覚えているか?土俵という神聖な場に女性は上がってはいけない。それは古くからのしきたりであり、行司はそれに従ったのであろう。知らなければ全く懐疑的な行動ではあるが、まさにこれは南部アメリカでの黒人差別と一緒だ。レストランやトイレ、衣装室までもが白人とは別の場所。あくまでも黒人個人に対して差別を行なっているわけではなく、古くからのしきたりを守っているというのが差別する側の意見である。
私達の社会でも、そのような古いしきたりを今も考えもなしに、ただそう教えられてきたからという理由だけで使っていないだろうか?
今一度、差別とはなにか。人種に対する差別。社会規範の中でうまれる差別。そのような事に対して今一度考えさせられる映画であった。
最後に、映画を最後まで見た人の中で、ある意味不完全燃焼に終わった人もいると思う。なんというか、終わり方が浅いというか、ドキュメンタリー系やヒューマン映画系にありがちなクライマックス不足のようなもの。そのようなものを感じた方、ご心配なく。そこから先のクライマックスを作るのは貴方です。何故なら差別は至る所に残っているから。考えに考えて多くの人と考えを共有していくことが大事だと思い、レビューさせて頂きました。
最後まで読んでくださった方ありがとうございます。