劇場公開日 2019年1月25日

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「タイトルに恥じない良作」十二人の死にたい子どもたち つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0タイトルに恥じない良作

2023年11月24日
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鑑賞方法:DVD/BD

予告編を観て、「おいおい、嘘だろ?」と狼狽した。映画好きなら「十二人の~」と言われれば、どんなストーリーなのか、ピンとくるもの。

リアルタイム型・密室ゲーム?!そんなわけないだろ!
これは予告編がおかしいのか、それともタイトルから想像したような物語ではないのか?
いや、原作はタイトル通りだったよ?

期待と不安がごちゃ混ぜになりつつ、観てみたら「十二人の死にたい子どもたち」のタイトルにふさわしい、素晴らしい映画だった。

思えば、「死にたい」という気持ちは、今そこにある不幸への、大袈裟で単純な対処法なのだろうと思う。
人生で初めて直面した不幸に、どうやって対抗するのか?その選択肢の一つとして、暗闇から立ち上る誘惑。

かくして十二人は廃病院で安楽死に臨むことになる訳だが、予期せぬ「13人目」の存在が自殺決行の壁となる。
「決行には全員の意志が一致すること」がネックとなり、紛れ込んだ13人目・0番を巡って意見が対立する訳だが、この意見対立こそ作品の醍醐味だ。いやー、待ってましたよ!この展開!

0番がどうやって紛れ込んだのか?を追いかけながら、どうして死にたいと思ったのか?も少しずつ明らかになっていく。
その理由は様々で、「君は悪くないよ」と思ったり「そんな事で死のうと思ったの?!」と思ったり大忙しだ。

私が個人的に一番素晴らしいと思っているのは、12番のマイちゃん。彼女が参加した理由が笑っちゃうほどささやかな問題なのだが、本人にとっては大問題なのだろう。
そのギャップが良い。
命に優劣はない、という事を端的に示す深い問題であり、死にたい理由が本人以外(観ている私たちも含めて)にとって「くだらない」から面白いのだ。

生きることに優劣はない、死にたい理由にも優劣はない。他人の「死にたい理由」を否定は出来ないし、逆に言うと自分の「死にたい理由」は他人に共感してもらえないものである可能性があるということ。
それに気づくだけでも、この集いには価値があった。

原作でもその素晴らしさは充分表現されていたと思うが、映像になったことでより感覚的に馴染んだと思う。

予告編がなんであんなアオリなのか理解に苦しむが、それもまた価値観の違いってヤツなのだろうか?

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つとみ