「興味深いテーマの割に内容がとてもチープ。」十二人の死にたい子どもたち Theo5さんの映画レビュー(感想・評価)
興味深いテーマの割に内容がとてもチープ。
トランポリンに乗って華麗にジャンプを決めて、格好良く上昇したけれど、一番頂点で凄いダサいポーズを決めてしまい、そのまま事故みたいな感じで地面に落ちていったような映画でした。
12人の自殺志願者が集まり、用意された最後の床となるベッドが並ぶ部屋で番号を振り分けられた自殺志願者達が、机に並んで座り、それでは自殺に反対の方が居ましたら挙手願いますなんて展開はまさに『十二人の怒れる男』のような期待値の上がる始まり。
「ここから反対って、ここに来ておいて何を言ってんだ」みたいな全員の意思を一人の男がくつがえしていく熱い人間ドラマが始まるかと思いきや、焦点はひとつの招かざる死体に。
ここから一旦、自殺は置いといてのミステリーが始まるわけですけど、まあチープでしたね。
ミステリー部分に関して言及しますと、まずは何故こんな似たような髪型をした眼鏡男子を3人も出してしまったのかという配役の雑さが突っ込まずにはいられない。
1人は実は病気でウィッグでしたって事でやっと個性が出たと思ったら、すぐにまた元通りの眼鏡男子に戻ってしまうのもおかしい、死ぬと覚悟を決めてきたのだから、もうそんな自分を隠す事もないだろうと思います。
もっと太っちょとかクセッ毛アフロとか視認しやすい役を出しましょうよ。
後、それぞれに名前付けてましたけど、もう番号で呼び合えばいいじゃないですか、1はイチ、2はニイみたいな、名前付けられても憶えられない。ノブオは皆がノブオノブオ言うから認知出来たけど、他はもう忘れてる。5人ぐらいなら憶えれるけど12人は流石に無理。
この番号も謎解きの要素のひとつなんで、逆に番号で呼び合った方がややこしくなってミステリー的にはありだと思うんですが。イチが実は8番目でなんて感じで。
と見る側への配慮が薄いなあと思いながら、観てたんですが、謎解きも明かされても、なんか全然対した事なくて、ヒントも豊富でほとんど引っ張らないで種明かししていくので見応えなさすぎでした。
そっか、じゃあこの映画はミステリー部分はおまけのやっぱり人間ドラマなんだなと思いきや、そっちも全然そんな事はない。
まずミステリー部分に尺を取りすぎてるせいで、登場人物達の描写がおざなりになりすぎていて、ちっとも感情移入が出来ない。
それに加えて、登場人物達に今から自分は自殺するんだという悲観性がちっとも感じられないのが残念。
グループに別れて、調査したり準備したりしてる時は旅行合宿に来て楽しでる学生を見てるようでした。
確かに「子供達」ですからノリが軽くて、一人で死ぬのは怖いから皆で、みたいな軽い気持ちで来てるていうのなら解るんですけど、話聞いていくと結構ひとりひとり、なかなかに重たい物を背負ってるんですよ。
だからもっとドロドロしてて、なんなら全員俺が殺してやるみたいな展開や、男女でアイドルも混ざってるわけだから、死ぬ前に1回ヤラせてくれよ、からのようこそエイズの世界へ、まあでも死ぬからいいよねみたいなキツい展開があってもいいのに、やってる事は自殺合宿というチープさ。
最後は特に決めてとなった事柄もセリフもなかったのに、皆、するすると自殺反対志願者に転換。
凄い笑い合って病院を出ていくシーンとかこの後、絶対誰かが裏切って何かとんでもない事が起こるのかなとか思ってたけど、まさかのハッピーエンドみたいな終わり方で終了。
結局誰も助かってない。ヘルペスも治ってないし、ヴィジュアル系バンドの人も蘇ってない。
明日からも何も変わらない日常が待ってるはずで、何も解決していないのにあの笑顔は吹っ切れたとかじゃなくて何も考えていない緩んだ笑顔なんだなとしか私には映らなかった。
ノブオだけは軽く傷害事件を起こされていたけど。