「つまらなくはないけど……」十二人の死にたい子どもたち といぼさんの映画レビュー(感想・評価)
つまらなくはないけど……
原作未読です。予告編を事前に視聴しただけでストーリーに関する前知識はほぼありませんでした。
自殺するために集まった十二人の少年少女、そこに何故かいる十三人目の死体。誰が殺したのか、犯人は誰か。ジャンルとしてはミステリー作品になります。
決してつまらなくはないんだけど……面白くもない。
犯人を当てる解決の場面があまりに酷く、ミステリー作品としての体を成していないです。主人公は根拠も証拠もない中で、まるで千里眼で全て見ていたかのような名推理を披露します。当てられた犯人も、一切反論もせず罪を認めるのも違和感があります。ノックスの十戒を知らないんですか。「探偵方法に超自然能力を用いてはならない」ですよ。しかもラストの「死んだと思ったら死んでなかった」という展開は思わず「なんじゃそりゃ」と言ってしまうくらいお間抜けに見えました。最後に一人ひとり挙手する場面も、スローモーションを使って無駄に尺を取っていてストレスが溜まります。細かな部分ですが、地下室なのに雷の光が差し込んできたりするのは違和感しか感じません。全体的に見て、脚本も演出も酷かったです。
「十二人の人間が卓を囲んで議論する密室会話劇」というと今でも語り継がれる1957年の超名作「十二人の怒れる男」がパッと思い浮かびます。テーブルや座席の配置が全く同じだったり満場一致の採決をとるなどの要素を見ると、もしかして原作者や映画制作陣も「怒れる男」を意識してたのかな?と勘繰ってしまいますが、あらゆる面で60年前の作品に劣っていました。この映画を見るよりも「怒れる男」を見た方が良い。「十二人の死にたい子どもたち」を新作レンタルで300円400円払って借りるより、旧作レンタル100円で借りれる「十二人の怒れる男」を借りたほうが良い。
良いところを挙げるならば俳優陣の演技合戦ですね。若手実力派を集めていたこともあって素晴らしかったです。橋本環奈と杉咲花がめちゃくちゃ可愛い。