「意外に面白い」十二人の死にたい子どもたち 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
意外に面白い
舞台の会話劇みたいな映画である。インターネットの時代ならではの設定で、星新一のショートショートみたいだ。安楽死を望む12人の登場人物のそれぞれにこの場所に来るまでの背景があり、しかしそれが説明的になりすぎず、話が進むにつれて徐々に明らかになる。よく工夫されていると思う。
新田真剣佑が非常に重要な役割を果たす。狂言回しと言ってもいい。役からすると少し体格がゴツすぎるきらいはあるが、そこを補う演技力がある。その他の出演者もそれなりに上手に演技していたと思う。特に北村匠海はうまい。「君の膵臓をたべたい」でも光る演技をしていたが、この作品でも登場人物の中でも特に忙しいノブオを自然な感じで表現していた。黒島結菜がどうしても嵐の二宮和也に見えて仕方がなかったのは当方だけか。
死を自分で選ぶことについて、俗なパラダイムに縛られずに自由に考える場を提供するという設定は画期的だ。実験的な作品だから日常生活からかけ離れているかと思ったが、登場人物それぞれの物語は割と身近な題材ばかりで、子どもたちが自分たちの状況を冷静に受け止めているのがリアルである。自分が世界の中心にいないことをよくわかっているのだ。演出の力と役者陣の演技力で、意外に面白い作品に仕上がったと思う。観ていて楽しかった。
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