「映画よりも舞台映えする作品」十二人の死にたい子どもたち イッスィさんの映画レビュー(感想・評価)
映画よりも舞台映えする作品
告知されてから危険な香りはしていた作品なのだが、流行りのデスゲームインスパイアや人狼派生系のB級邦画を避けていたこともあり大衆向けで豪華キャストとあらば怖いもの見たさで観る価値も…と原作未読で鑑賞。
蓋を開ければ拍子抜け…ショッキングやホラー、どんでん返し!とは縁もゆかりもないハートフル映画。
時間の無駄とまで思うことはないが、肝心の登場人物が掘り下げるには尺が足りないのか説明的すぎて12人、13人もいて誰一人として感情移入や応援したいという気になれなかったのは問題。
やさぐれ不良だから粗暴な金髪アロハ、ギャルだから金髪で頭の弱い女子高生、病気持ちの推理オタクだからメガネで物事に注視しがちで口元に手をやる癖がetc...
見せ方がステレオ的というか上司が若い世代の流行りに乗っかろうとした結果寒がられるそれと似ている。
隠蔽のためにあれだけ苦労をかけたアンリが、受け取ったマスクと帽子を玄関前の植木に適当に投げ捨てるか?といったような人物の行動に理解が及ばないというか"キャラクターを無視した話を進めるためだけに用意された行動"らしき部分もちょいちょい見受けられてしまい、それも全体の予定調和感を助長させている気がした。
そもそも論だが12人の中で決められてもない"13人目がいてはいけないルール"が適用されており、そのために必要のない隠蔽工作、シンジロウのためだけに用意された必要のない隠蔽工作を解き明かす推理パートがはじまり、それに対する周囲の熱演もあいまって観ている側は完全に置いてけぼり状態。
テーマもキャラクター性も面白いのにとても勿体ない。
その辺りの補填も含めて原作には興味をそそられた。
ここまで酷評しておきながら2.5点をつけたのは俳優陣の演技と時折方言になるミツエがとても面白かったから…という俳優贔屓。
実際俳優陣は何も被が無く脚本と演出が問題。
ほぼワンシチュエーションで、各キャラクターも個性的なので映画よりも舞台映えする作品な気がする。
観劇して映画映えするだろうなあと思ったことはあるがその逆ははじめて。
ここだけの話、PTを使って観て良かった…。