「命の選択を見せつけて」十二人の死にたい子どもたち KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
命の選択を見せつけて
十二人プラスワン、推しメンを見つけるとまあまあ楽しく観られる。
「死にたい」が共通点の彼らが繰り広げる疑心暗鬼の密室人間劇。
まず実行するか否かを話し合いで決めるところが面白い。
現在の生に懲りてこれから皆で命を終わらそうとしている場に至ってまで更に人間と人間のやりとりがあるのかと。
いささか緊張感のなさげな十二人だけど、案外そんなものなのかな。
集団自殺するために集まっているのに死体が先に置いてあるからさあ謎解きしましょう、ってどんな思考回路だ。
死体がもたらすデメリットや引っかかる点が弱すぎて。
だったらとっととこの場を離れて普通に一人で死ねば?なんて言うのはご法度か。一人で死ぬのが怖いわけなんだから。
目的のふんわりした謎解きを進めるうちに見えてくるそれぞれの背景や想い。
側からすれば「そんなことで…」と思うものもあるけど、本人にとっては命の見切るほどとても大きいものでその価値を人が侵すことは出来ないなと考えた。
売れっ子女優リョウコの叫びは、橋本環奈本人にも重なるものがありなかなかグッとくる。
セイゴは頭の悪いヤンキーに見えて案外理にかなった行動を取るし、メイコは切迫詰まりすぎて怖い。
タカヒロの吃音が一瞬なくなる時が好き。
高飛車な性格のアンリが、個人の傷や意向には徹底的に寛容で尊重するスタイルなのが面白い。
非現実的な女言葉をゴリゴリに使っても演技が上手い杉咲花はやっぱり凄い。
廃病院中を歩き回り次々現れる不可解なことと新たな犠牲者の現れにはワクワクしたのに、メインとも言えるタネ明かしパートが死ぬほど薄すぎて本当にガッカリ。
シンジロウのその推理力はなんなんだ、いくらなんでも万能すぎでしょう。みんなで手分けして調査した意味あった?
死体の正体もしょうもない。
脳死状態の人間があんなタイミング良く大ゲップするものなのか?植物人間ってゲップ出来るのか?
呼吸や脈の確認なんて見つけた時点でやってくれ。
ユキは地味すぎて逆に怪し気だったし。
最初から白状したって何の支障もない真相。回りくどいにも程がある。
悪意のカケラもない薄味のストーリー、なんかほんとすごくどうでもいいです…
せめてもう一段階何か展開があれば良かったのに、自殺中止でそのままエンドって。
綺麗なまとめ方にそんなにこやかな表情されてもね。
いや良かったんだけども。よかったじゃない、自分の命の行方を自分で決められて。これで良いのだ。
ミツエがリョウコに寄り添う姿が温かくて可愛い。橋本環奈可愛い。
エンドロールの映像には呆気に取られてしまった。
改めて分かりやすくご丁寧に解説されるなんて、観客の理解力が全く信頼されてないんだなと少し悲しくなる。
ここまでやっちゃうくらいなら一人一人の過去の映像やその後の映像のほうが観たかった。
腹立つことが本当に多くてがっかりすることこの上ないけど、話し合いのモダモダやそれぞれのキャラの掘り下げは結構好きなので何だかんだであと3時間くらい長くても観ていられる。
不謹慎な言い方になるけど、自殺する人やしようとしている人に興味があるのでそこをもっと突っ込んでスリリングに展開して欲しかった。
私の推しメンはロリータファッションバンギャのミツエ。話し方がとても好き。
彼女がいたからグダグダ言いつつ楽しく観られたかな。
0番の子がとまんに似てるなあと思ったらとまんだった。