「負の連鎖」七年の夜 KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
負の連鎖
非常に辛く、しんどくてしんどくて堪らない気持ちになる。
負の連鎖がこれでもかというほど続き、もう勘弁してよと悲惨な思いになりながらもしっかり面白く観られるスリラーだった。
息子を心から愛し守ろうとするヒョンスと、妻と娘に独りよがりな執着を押し付けるヨンジェ。
二人の父親の全く異なる愛情と執着、逃げと責めの過酷なぶつかり合いが描かれている。
正直どちらもとんでもない野郎であるけど、特に自己愛から来る復讐する側にこれほどまでに共感出来ないケースもなかなか珍しいのでは。
何よりも子供の受難がキツ過ぎる。
ドミノ倒しのように悲劇に転がり落ちる様が恐ろしかった。
あの時こうしていれば。あの時こうしていなかったら。
どうしても考えてしまうけど時すでに遅し。
そもそも一瞬の判断だけではなく、これまでの夫婦のコミュニケーション不足なんかも関係してくるのでやりきれない。
ヒョンスの過去から来る奇行や死んだ娘の幻影などホラー的な演出が好き。
過去のトラウマから家族を大切にしたいと懸命になるのが痛いほどわかる。空ぶっている気もしないでもないけれど。
ソウォンが娘の写真に花を飾るシーンがとても良かった。なぜか涙が出てきた。なんて素敵な子なんだ…
種類の違う「助け」のシーンが度々出てくるのが印象的。
ヨンジェの妻、潜水師、ヒョンスの父、ダムの水門、刑務所での行動、最後のヨンジェなど。
それぞれベクトルは違うけれど一つ一つ考えていくと胸が締め付けられる。
究極の選択ばかりで何が正しいことなのか今でもずっとわからないけれど。
過去を紐解くような構成で、すべての行動の結果は最初から何となくわかっているのにドキドキした。
本当に救いようのない物語だし観ているだけで死にそうになるけれど、最後のソウォンの表情は良かったな。
ヨンジェの娘の名前と村の名前が同じセリョンなのは支配の意味なのか、偶然の一致なのか。