「パニック作品だけど静かな映画。実は深い映画だと思う。」ザ・ミスト パルムさんの映画レビュー(感想・評価)
パニック作品だけど静かな映画。実は深い映画だと思う。
スティーブン・キングのミストと勘違いして観たのですが、これは大当たりでした。考えさせられた映画ランキングとしてはかなり上位です。
作品自体は地味ですが、暗示に満ちていて面白いです。いろいろな見方ができるのかもしれませんが、インターネット社会へ本格的に変わろうとしている昨今の世代差・性質差などによる順応性の深刻な差異を暗示しているように感じました。正体が分からず全体像は見えず人によっては即死するほどに受け入れられない霧はサイバーに似ています。
生命維持装置であるカプセルから出られなくても狂うこともなくおとなしく成長している子供たちの姿は(オンラインで友達と会話。恋心も知る)、ここ10年は現実でもよく見る光景で、映画の子供のように病気ではないもののスマホ片手にいつまでもベッドにいる子供たち(大人もそういう人が多いですよね)の姿を彷彿とさせました。映画の子供たちはあくまでも病気でカプセルの中にいるので現実世界とは違いますが。
「このままだと警察や医者や電気技師も全部いなくなる」という夫婦の会話がありましたが、死の霧によってほとんどのパリ市民が死んでいるなかで特にそうした組織が無くなることを危惧するというのもパニック映画としては突飛ですがリアリティがありました。
日本では(失礼、またリアルトークです)政治やマスコミがオンラインによって経験がないほどの軽薄さを帯びてきていますが、今まで積み重ねた社会システムが無くなる危機を迎えているのは映画と同じで、社会のシステムが崩れると当然社会システムに身を委ねることもできなくなるので、環境に順応して生き残れるタイプの子供たちは世界を1から作り直す必要があるわけです。その新しい力とされるものがもしもカプセルの中にいても(現実世界ではベッドに寝ているだけでも)発狂しないような性質に寄りかかるものならばちょっと恐ろしい行く末になりそうだなぁと思ったりしました。
映画冒頭で、呼吸器をつけた高齢者が「もっと酷い時代を生きてきたんだ」と自分を励ますように言いますが、アメリカの元防衛庁長官が書いたサイバー戦争の本の「戦争中の方がはるかにマシだと思えるような酷い時代(影で戦争以上に人が死んでいる)が来るかもしれない/来ている」という言葉を思い出してしまいました。今のこの早急な進化については、新人類・新しい時代・新しい価値観という、時代がリニューアルする際に「従来使われるスローガン」に当てはめるには、若干、若年層からして消え過ぎですね。死人の数が多すぎる。また適応できる人と死ぬ人の性質差を考えると必ずしも前向きな進化ではないかもしれません。
すみません。
ついつい映画と現実世界と混ぜて感想書いてしまいました。
サイバー問題は核問題以上にどうにもならない問題なので話題にすると頭がおかしい人になるので(なんかじゅうぶん頭がおかしい人っぽい気がする飛躍した感想ですが^^;)話しづらいんですけどこの映画はサイバー問題に当てはめると大体の駒やセリフが腑に落ちる気がしたので、書いちゃいました。でも映画はもちろんメルヒェンですよ。単なる暗示を楽しむもの。
観たことない人はぜひ観てみてください。こんな見方もあるよってことで。パニックにも近未来にも振り切れていない分ダサさがあってそのダサさが妙にリアルでした。不思議とあとを引きます。