M 村西とおる狂熱の日々 完全版のレビュー・感想・評価
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作品はナイスで無くても、村西監督自身がナイスですねぇ♪
Netflixで配信され話題となっている「全裸監督」のモデルとなった村西とおる監督。
1980年後半の頃の活躍はAVに興味が有る無いに関わらず、その名を世間に轟かせていましたが、当時はそのキャラクターから胡散臭さしか感じませんでしたが、まさかそんな村西とおる監督が再び脚光を浴びるとは思いませんでしたw
話題となっている全裸監督は先日鑑賞しましたが、確かにむちゃくちゃ面白い!
山田孝之さんの振り切った演技とモデルとなった村西監督の波乱万丈な人生とエネルギッシュなキャラクター、そして破廉恥かつ覗いてはいけない様なアングラチックな世界を垣間見る様な設定が上手く合致したのでしょうね。
そんな話題の村西とおる監督のドキュメンタリー映画は上映前から確認はしていましたが、なかなかタイミングが合わず鑑賞出来ずにいたんですが、テアトル新宿の上映終了二日前にやっと鑑賞出来ました。
で、感想はと言うとまあまあw
ドキュメンタリー作品なので、物語の起承転結は求めづらい所がありますが、一言で言うと「ザ・ノンフィクション」のデラックス版みたいなw
村西とおる監督が起死回生を狙って製作した4時間超の大作Vシネマ「北の国から 愛の旅路」の撮影風景のメイキングのロードムービーが主なんですが、この「北の国から 愛の旅路」と言う作品がもうむちゃくちゃと言うか、一言で言うとC級カルトテイストで正直売れない雰囲気がプンプンw
全裸になった女性が沢山居て、北海道の自然の中で「おもちゃのチャチャチャ」を歌っている姿は超シュールw
そんな胡散臭い作品の製作現場のドキュメンタリーが主ではありますが、村西とおる監督の苦労は満腹になるくらいに堪能しましたw
製作現場の苦労はどのジャンルでも同じかと思いますが、とにかくハプニングの連続。
女優達はワガママだし、段取りミスも多々。
事故も起こるし、おまけに台本が現場入りしていても出来上がってない。
普通の映画やドラマの撮影現場ではちょっと起こりそうにない事ばかりでそれがAVの現場と言えばそうかも知れませんが、ちょっと考えられない事が多い。
でも現場の熱量はどんなジャンルでも同じでそう言った意味ではバイタリティー溢れる村西監督のエネルギッシュさが垣間見えるんですが、全体的にはちょっとバランスが悪いかな。
当時のAV現場の撮影風景を撮った映像なんてなかなか無いかとは思いますが、そこを多少期待してた部分もあったのでw、ハレンチさは薄いですw
また、オープニングの西原理恵子さんや玉袋筋太郎さん、片岡鶴太郎さんや高須院長らのインタビューも正直要らない。
劇中に流れる「トルコ軍隊行進曲」や「ワルキューレの騎行」は合ってはいるけど、胡散臭さをより倍増させてる感じw
村西監督のインタビューも全体の4分の1を占めていましたが、村西監督のインタビューも全裸監督のヒットで割りと見る機会が多い事からそんなに新鮮味が無いんですよね。
いろんな経験をし、子供時代の貧乏から脱却する為に様々な仕事にチャレンジしていきますが、いろんなアングラな世界での商売に足を踏み込んでいったとしても先見の目は確かで確実に成り上がっていく。
勿論いろんなトラブルにも見舞われるがハプニングを物ともせず、突き進んでく村西監督は流石一時代を築かれただけの方だなぁと思いました。
生きる事に貪欲で性欲と食欲に貪欲。
それは幼い頃の体験からなんですが、とにかくエネルギッシュなんですよね。
“死にたくなったら、下を見ろ。俺がいる”と言うキャッチコピーがありますが、確かに前科7犯で借金50億は物凄いですが、村西監督のバイタリティーは常人の遥かに上を行ってます。
だからこそ、一時代を築かれて、再び脚光を浴びているのではないかと思います。
村西とおる監督の歴史を語る上で外せない懐かしいAV女優さんも映像で紹介されますが、個人的には今や伝説として語られる黒木香さんのパートはもっと観たかったです。
再び脚光を浴びてるのは全裸監督の影響でありますが、キャラクターが強烈でインテリジェンス。
現在は表には一切出られない信念は凄いし、多分表に出て来たくない思いもあるかと思いますが、野次馬根性的に興味が唆られます。
「弁護士のくず」を描かれた井浦秀夫さんの「AV列伝」と言う漫画があるんですが、それが結構面白くて、AVの世界で活躍する方々の赤裸々な様子が魅力的に描かれています。
AVと言う世界は何処かアンダーグラウンドな世界で興味本意では入ってはいけない世界かと思いますが、実は男性の日常の中で普遍的に存在するジャンルで、現在のセクシー女優と言う言い回しや以前に比べてオープンになった背景や商業として成立しているのは数々AV業界で活躍された先人達の功績かと思います。
そのAVの黎明期と過渡期の中心に居たのは間違いなく村西とおる監督かと思います。
また今回のVシネマの撮影風景を撮影しているのが清水大敬さんと言うのも興味深いです。
舞台役者志望で黒澤明監督の「影武者」にも出演してますが、乗馬訓練中の落馬で怪我をしてしまい、ピンク映画の世界に足を踏み入れられてますが、自身で喜劇劇団を立ち上げられたり、監督をしたりと役者としての確かな技量を持ち合わされてる方で「AV列伝」でも魅力的に描かれています。
そんな清水大敬さんが撮影をされてたなんて、ちょっと嬉しくなりましたw
劇中のインタビューでも語られてましたが、バブルの時代の申し子ではありますが、現在も精力的に活動されている人間力には感服します。
だからこそ、期待もしてたのでもっと作品として楽しめたかったなぁと。
正直全裸監督程の面白さは無いんですが、村西とおると言う人間に興味を持っていると結構楽しめます。
アングラだからこそ面白いし、覗いてみたい気持ちになりますが、村西とおる監督が注目を浴びた事で他のAVの世界で生きる人々にスポットを当てた作品が作られる事を期待したいです。
「お待たせ致しました、お待たせし過ぎたかも知れません」
昔のノンフィクションのルポルタージュを観ているような、情熱駄々漏れのハイカロリー&ハイテンション作品である。稀代のエロ事師が、借金返済の為4時間越えのVシネマを制作して逆転満塁ホームランを当て込んだ制作現場を余すところ無く取材撮影したドキュメンタリーである。そのVシネ作品『北の国から 愛の旅路』そのものは未鑑賞であるので、もし鑑賞していたら裏側を知れたことの違った楽しみが拡がるのだろうが、今作での村西とおるの生き様の一端を垣間見るという方向においては少々物足り無さを感じられた。あの馬車馬のように働き、常に口に食べ物を運び、そして七転八倒の数々のトラブルに対して、決して噛まない滑らかな“しゃべり”は、以前に数々のマスメディア越しに登場した時代の寵児達と同一のポテンシャルそのものであるに核心を得る。勿論、あれだけ接写でつきまといを伴う撮影なのだから、もしかしたら都合の悪いところは編集で落としているだろうし、ましてや80年代の時代は今で言う“ブラック”体質が通常運転であったAV世界であろうことは言うまでもないので、全てを信用することでもない。ましてや編集者の恣意がベースなのはドキュメンタリーの背負った宿命である。ただ、とはいえ今作の“事実は小説よりも奇なり”を地でいく村西監督の“もっている”運命は、下手なドタバタ劇よりも余程リアリティからかけ離れているかのようなタイミングと出来事の絨毯爆撃なのである。他のレビュアーさんが仰るように、それは無計画で無鉄砲故なのかもしれないが、実は本人自身がそういうプランニングに対しての無頓着、否そもそもそういう生き方とは無縁だったことに他ならない。あのバブル時代前の高度成長期の中小企業のワンマン創業者の1人なのだからだ。ご多分に漏れず幼少期の貧困をバネにしての成り上がりを強く呪詛する野心家の1人であり、他人よりも早く気付き、他人よりも長く働き、そして他人よりも本能に貪欲で、その目的までの最短距離への鼻の利き方は超能力といって良い程の“閃き”なのである。今のIT社長にもこういう人はいるのかも知れないが、表立っては表明しないであろうこの、人間の“知”とは逆ベクトルの“バイタリティ”の優良児は、周りのスタッフ、キャスト、そして女達を竜巻の如く吸い込んで遠心力で飛ばしていく。BGMで使用されている、“トルコ軍行進曲”や“ワルキューレ”がこれ程似合う人物は他にはいないだろう、もしかしてテーマ曲なのではと勘違いしてしまう程、音楽が人を具現化可能であることを証明している。
北海道ロケでの数々の事件、トラブル、過去の咎、そしてドメスティックな家庭環境もインタビューに答えつつ、言葉が留まらない“登別温泉の滝”のような淀みなさに唯々圧倒なのである。
あくまでも今作はVシネの裏側がメインなので、そもそもの監督がこの“生業”を自分の糧にしようと思ったのかの深度のある突っ込んだ取材は語られていない。未だギラギラしたその欲望は中国大陸へと狙いを定めているようだが、その原子力並の“ダイナモ”の根源を原子レベルで解読できれば、将来の人類にとって貴重なノーベル賞級発見だと思うのだが・・・w
22歳の黒木香の凄みとか、方やグズグズの女性モデルのプロ意識の無さ、脚本が出来ていないことの行き当たりばったり感、勝手に馬に乗るわの好き勝手の女優、北海道の移動距離の異様な長さ、クライマックスの車が滑って轢かれる戦慄のカット等、確かに枚挙に暇がない画力の強さはあの時代をノスタルジックと共に振り返ってしまう惹き込みだ。
「死んでも譲れないスケベ心」の本質をもっと知りたいと思わせる、まだまだ監督の心の奥底の修羅を探求してみたい一作であった。
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